アーティスティックスイミング(AS)の井村雅代ヘッドコーチ(HC)は泳ぎ終えた8人のマーメイドを優しい笑みで出迎えた。デュエットに続き、チームも宿敵ウクライナに次ぐ4位。指導者として迎えた10度目の五輪は初のメダル無しに終わったが、指揮官は「難易度の高いハードな内容を良く泳いだ。負けた気がしない」と健闘をたたえた。
和楽器の調べに乗せ、日本全国の祭りを表現したチーム・フリールーティン(FR)の演技。日本らしい演目は、「会場がわく中で泳がせたい」という選手への愛情から生まれた。求める結果は出せなかったが、吉田は「今まで泳いできた中で一番手応えがあった」。努力の成果は見せられた。
高さやパワーを重視する昨今の採点傾向にあわせ、前回大会からエース乾以外のメンバーを一新し、165センチ以上のメンバーを集めた。若手を相手に、毎朝7時半から10時間近くプールサイドに立って技術を叩き込んだ。新型コロナウイルス禍という未知の経験も経て、迎えた自国開催の五輪は「今までで一番やりがいがある」と常々口にしていた。
1984年ロサンゼルス大会から競技に命をささげてきたメダル請負人も、節目を機に「五輪はこれが最後。次の舞台は若いコーチに譲るべき」と退任の意向を示した。16日に71歳の誕生日を迎える〝闘将〟の最も熱い夏が静かに幕を閉じた。(川峯千尋)