デルタ株蔓延で変わる感染経路

新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、インド由来のデルタ株への置き換わりが進み、今月初旬の段階で陽性例に占める割合は、関東で約90%、関西で約60%と推定されている。従来株やその後に置き換わった英国由来のアルファ株と比べ、デルタ株の感染力の強さは際立っており、クラスター(感染者集団)の発生状況や感染経路も変容。対策は一層の強化を迫られている。

「これまでクラスターがほとんどなかった百貨店や理美容、学習塾などでも発生している。百貨店では、人が多い地下や1階で多くの陽性者が出ている」

西村康稔経済再生担当相は、政府の基本的対処方針分科会でこう述べた。

コロナの感染拡大当初、クラスターが発生したのは飲食店やライブハウス、スポーツジムなど、いわゆる3密(密閉・密集・密接)の状況が中心だった。その後、高齢者施設などで増え、ワクチンの接種が進むにつれ、減少してきた。こうした状況にもデルタ株が影響を与えつつある。

阪神百貨店梅田本店(大阪市)では従業員の集団感染が発生、感染者数は計130人を超えた。当初は利用客らが立ち入らない店舗のバックヤードで感染が広がったとみられていたが、大阪市の松井一郎市長は保健所の調査結果を踏まえ、「客からの感染の可能性が高い」との見方を示した。

市は無症状の客が、マスクを正しく着けずに大声で会話したり、ウイルスが付いた手で何かを触ったりしたことで感染が広がった可能性を指摘。大阪府の吉村洋文知事は「デルタ株の感染拡大力の強さを物語っている。今までの接触の程度であれば感染しなかったものも感染するということだと思う」と語った。

国立感染症研究所などによると、デルタ株の感染力は従来株と比べ2倍、従来株より高いとされるアルファ株と比べ、1・5倍高い可能性が指摘されている。感染者1人からうつる人数を示す「再生産数」は5~9・5で、季節性インフルエンザより高く、水ぼうそう(8・5)に匹敵。「最も感染力の強いウイルスの一つ」との見方もある。

また、感染研が厚生労働省に対策を助言する専門家組織に提出した資料では、感染者のウイルス量が、デルタ株は従来株に比べ1200倍で、増殖速度が速く感染早期に感染性が高い可能性があるとする中国のグループの研究が示された。

ただ、デルタ株独自の対策があるわけではない。

専門家組織は、マスクや手指衛生、人との距離の確保、換気といった基本的感染防止対策の強化を促し、「マスクについては、飛沫(ひまつ)防止効果の高い不織布(ふしょくふ)マスクなどの活用を推奨する」と呼びかけた。感染研所長で専門家組織の脇田隆字(たかじ)座長は商業施設を利用する際の対策について、「なるべく少人数で時間を短くして、混雑した場面を避けることが重要だ」と改めて訴えている。