灼熱の砂丘に舞うドローンは熱中症の救世主

上空から砂丘の死角を監視するドローンは、「鳥取砂丘レンジャー」の一員ともいえる
上空から砂丘の死角を監視するドローンは、「鳥取砂丘レンジャー」の一員ともいえる

国立公園「鳥取砂丘」(鳥取市)で8月から、ドローンを使った空中パトロールが始まった。遮るものがなく日差しが照りつける真夏の砂丘は、砂の表面温度が60度を超えることもある灼熱(しゃくねつ)の地。毎年、熱中症の症状を呈する観光客が続出し、昨年は死者も出た。これまでは鳥取県の「鳥取砂丘レンジャー」が人力で監視していたが、立ち入りが少ないエリアまで目が行き届かない側面もあった。ドローンはその死角を補う空のレンジャーで、導入した鳥取県は事故防止の「助っ人」とする考えだ。

前代未聞の熱中症死

昨年8月17日、前代未聞の事案が発生した。同日午後6時ごろ、鳥取砂丘西側の通称「長者ケ庭」と呼ばれるエリアで男性が倒れているのが発見され、死亡が確認されたのだ。鳥取県警鳥取署の調べでは、男性は40歳代の観光客で、死因は熱中症。この日の鳥取市の最高気温は35・2度だった。

同署によると、死亡推定時刻は同日午後。発見が夕方になったのは、長者ケ庭のエリアは観光客が多い砂丘東側エリアから外れ、ただでさえ人の立ち入りが少ないうえに、新型コロナウイルス感染拡大の影響でいつも以上に人がいなかったためとみられた。

事態を重くみた鳥取県や市などは、鳥取砂丘レンジャーによる巡視を強化したり、熱中症注意喚起の看板の設置やチラシを配ったりして、昨夏を乗り切った。

夏場は猛暑日が続く鳥取砂丘。熱中症など体調不良者が続出する
夏場は猛暑日が続く鳥取砂丘。熱中症など体調不良者が続出する

負担減り効率的に監視

課題が残ったまま年を越え、県が今年に入って打ち出したのがドローンによる空からの監視だった。

監視エリアは、長者ケ庭を中心とした砂丘西側の70~80ヘクタール。東西16キロ、南北2・4キロの鳥取砂丘のうち観光の中心となる天然記念物指定地域146ヘクタールの半分以上にあたる。ドライブインが立ち並び、観光名所の「馬の背」と呼ばれる尾根がある砂丘東側と異なり、人の立ち入りが比較的少ない場所だ。

ドローンを飛ばすのは、熱中症警報の発令日で、このエリアを暑さがピークに近づく午前11時と、西日が差し始める午後3時の1日2回、約20分ずつ上空から監視する。鳥取砂丘レンジャーが2人一組で、操縦と撮影映像のチェックを行い、実施は9月末までを予定している。

鳥取砂丘レンジャーの竹ノ内司修さんは「これまではレンジャー7人が交代制で砂丘入り口近くの詰め所で定点カメラを使って常時監視したり、砂丘を歩いたりして巡視してきたが、起伏の向こう側にある西側エリアは監視できなかった」と指摘。そのうえで「死亡事案があったあとは西側エリアも巡視するようにしたが、ドローン導入により負担が軽減し、効率的に監視できる」と歓迎している。

ドローンで撮影した鳥取砂丘(鳥取県緑豊かな自然課提供)
ドローンで撮影した鳥取砂丘(鳥取県緑豊かな自然課提供)

8月は熱中症続出

砂丘は市街地よりも最大5度程度も気温が高いとされ、夏場は35度以上の猛暑日が続く。

このため、毎年、熱中症とみられる体調不良者が続出し、特に暑さがピークとなる8月は、過去3年間のデータで27人(令和2年)、17人(同元年)、25人(平成30年)と、ほかの月と比べて突出している。

年間110万人以上が訪れるとされる砂丘だが、熱中症の症状を訴えるのは関西など県外からの観光客がほとんどで、20代の若者層や10歳未満の児童や幼児が目立つという。

ドローンは鳥取砂丘レンジャーが2人1組で操作する
ドローンは鳥取砂丘レンジャーが2人1組で操作する

関係者は「夜通し車を運転して砂丘に着き、そのまま砂丘に入って動き回り、熱中症の症状を呈するケースがある」などと、その背景を推測する。

昨年の死亡者発生を受けた対策として県などは巡視や注意喚起の強化のほか、砂丘入り口に日よけ施設を設けた。今年度もドローン導入のほか、日よけ施設や看板、放送の追加実施などを予定している。

砂丘の西側エリアでは、過去に車が乗り入れたり、ロケット花火が打ち上げられたりといった禁止行為の痕跡が見つかっている。こうした点も踏まえ、平井伸治知事は「砂丘は保全すべき自然の遺産であり、危険なことがあってもいけない。ドローンを活用し、安心安全で自然景観、砂丘の保全が図れるようなレンジャー活動につなげていきたい」と述べた。(松田則章)