ソフトボールはエース、上野由岐子投手(39)=ビッグカメラ高崎=らの大活躍で米国を破り、金メダルに輝いた。野球は宿敵韓国を4日の準決勝で下して7日の決勝戦に進出し、銀メダル以上が確定した。東京五輪で最高の結果を残そうとしている〝日本のお家芸〟とも言うべき2つの球技は、されど五輪の競技として将来、存続発展していくのか-。
2008年の北京大会以来、13年ぶりに五輪競技として帰ってきた女子のソフトボールと男子の野球。東京五輪の正式種目に採用しないことが国際オリンピック委員会(IOC)の理事会で一度は決定したが、開催都市が選べる追加種目として実施されることがIOC総会で決まり、五輪の舞台に帰ってきた。
しかし、ソフトボールも野球も世界的な競技の普及は進まず、今回の参加チームはソフトボールが日本、米国、カナダ、メキシコ、オーストラリア、イタリアの6カ国。野球は日本、米国、ドミニカ共和国、韓国、メキシコ、イスラエルの6チームだ。イスラエルはユダヤ系米国人を主力に構成されている。サッカーやバレーボール、バスケットボールなど他の球技に比べると、明らかに参加国が少ない。
なので次回の24年パリ五輪では正式種目にならないことがIOC理事会で決定していて、開催都市が追加できる種目としても実施されないことが決まっている。五輪はパリの次の28年が米国のロサンゼルス、32年はオーストラリアのブリスベンだ。今回の東京五輪でソフトボールか野球に参加した国での開催なので復活する可能性はあるが、欧州やアフリカ大陸などでの競技人口の裾野が広がらない状況では、あくまでも希望的観測に過ぎない。
野球の「侍ジャパン」の今後も不鮮明だ。3月に開催予定だったワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の第5回大会は新型コロナウイルスの影響で延期された。現時点では23年に開催されるのでは…という報道が流れているだけの状況。今回、侍ジャパンを指揮した稲葉篤紀監督(49)は17年7月に代表監督に就任し、任期は東京五輪まで。〝ポスト稲葉〟として、前巨人監督の高橋由伸氏(46)の名前が球界の舞台裏で急浮上しているが、WBCはともかく、五輪の舞台で采配をふるえる環境が整うのだろうか。
こうした状況下で、日本球界の関係者の間では五輪の参加選手の基準を巡り、「日本は米国としっかりと話し合うべきだ」という声がある。日本や韓国は国内のプロ野球選手を主体とするメンバー構成だが、米大リーグ機構(MLB)はメジャーリーガーの五輪参加を認めていない。なぜなら、大リーグ30球団と選手との統一契約書の基本理念は「球団と契約した選手は162試合のシーズンに最高の状態で臨み、全力を尽くす」というものであり、他の試合によって影響を受けてはならない-とうたっているからだ。
「欧州などの野球の普及も大事ですが、まず参加選手の基準をアマ主体に統一しなければならないでしょうね。野球の母国である米国ですら〝五輪はどうせマイナー選手主体〟という感覚で熱が入らない。今回の大会でも米国が日本に敗れた際、米国では〝マイナー選手が負けただけ〟という声があった。この辺りを整備しないと五輪競技としての将来性は見えてこない」と話す球界関係者がいる。
日本にとってはソフトボールも野球もメダル圏内の競技だ。開催国か否かに関わらず五輪競技として常時、参加できる状況を構築しなければならない。どうすれば欧州が強い決定権を持つ五輪の舞台でソフトボールと野球が認められるのか。日本はまず、米国と膝を合わせて話し合うべきではないか。(特別記者)