4時間近くに及ぶ過酷な戦いだった。6日午前5時半、札幌市内でスタートした東京五輪の陸上男子50キロ競歩。午前8時台には気温が30度を超え、湿度も高くなった。サバイバルレースとなった中、日本人選手は川野将虎(まさとら)(22)=旭化成=の6位が最高。5日の男子20キロに続くメダル獲得はならなかった。
厳しい暑さは日本人選手の体力も容赦なく奪っていった。41キロ付近で2位集団につけていた川野が突然、倒れ込む。いったん四つん這いになった後、すぐに立ち上がって再び2位集団に追いつく闘争心をみせたものの、最後はメダル争いから脱落。ゴール後、医務室に運ばれた。
36キロ手前で2位集団から遅れた丸尾知司(さとし)(29)=愛知製鋼=は終盤、大きく失速して32位。レース途中の駆け引きで体力を消耗し、「だんだん体の余裕度が減っていった。やっぱり夏のレースは改めて厳しいと感じた」と振り返った。
出場59人中、完歩者は47人にとどまった。2019年に高温多湿のドーハで開催された世界選手権でもリタイアが続出。競歩とマラソンが札幌に移る要因にもなったが、結果的には札幌開催でも東京と変わらない酷暑に見舞われた。
男子50キロ競歩は東京五輪が最後の開催だった。競技時間の長さや若者の関心の低さなどが理由で、国際オリンピック委員会(IOC)は24年パリ五輪では新たに男女混合種目の実施を発表している。だからこそ、日本人選手は自国開催の五輪で最後を飾りたい思いを強く抱いていた。
丸尾が「今回が最後だと思って、日本人が金メダルを取らないといけないと思って歩いていた」と話せば、30位の勝木隼人(30)=自衛隊=も「もうちょっといい順位で笑顔で終わりたかった」と悔しさをにじませる。レース後も、札幌の強い日差しが選手たちを照りつけていた。(丸山和郎)