医療崩壊した「第4波」の反省と教訓 大阪は早期入院で重症化回避へ

訂1G大阪府内の入院率と自宅療養者数の推移
訂1G大阪府内の入院率と自宅療養者数の推移

新型コロナウイルス感染の急拡大に伴い、患者が急増する地域で司令塔の役割を担うのが入院調整機能だ。だが、3~6月の感染「第4波」で変異株が猛威を振るった大阪府では想定外のペースで重症者が増え続け、確保病床では収容できず「医療崩壊」に至った。反省と教訓を踏まえ、第5波では重症化回避のため、リスクがあれば軽症でも入院させ、早期に治療する対応に切り替えている。

後手に回り悪循環

大阪府は昨年3月、全国に先駆けて「入院フォローアップセンター」を立ち上げた。府内の空き病床を一元的に把握しながら保健所の依頼を受けて入院先を振り分ける組織だ。にもかかわらず、重症者が確保病床を上回る事態を回避できなかった。浅田留美子センター長は「重症者がオーバーフローする事態を予測できないうちに変異株が拡大し、後手に回る悪循環に陥ってしまった」と話す。

今年3月末、重症病床と軽症・中等症病床の使用率はいずれも40%台だったが、重症病床は急速に逼迫(ひっぱく)。4月13日に確保病床数を超過した重症者は5月4日にピークの449人に達した。重症病床に移れず、中等症病床で治療を続けた重症者は最大91人に上った。

浅田さんによると、1日あたりの調整患者数は4月下旬に最大約160人に到達。重症者を治療する医師と毎晩、オンライン会合を開き、翌日空きそうな病床のめどをつけ、中等症病床から移すといった綱渡りの調整を続けた。

浅田さんは酸素投与が必要ない軽症患者らについて「相対的に治療の優先順位が下がってしまった」と悔やみ、こう振り返る。

「気管挿管を希望する患者を対応できる病院に届けることは死守した。病床は限られるため、命の危険がある患者から入院してもらわざるを得ない」

入院拒否の事例も

厳しい現実を示す数字がある。療養者のうち入院患者の割合を示す「入院率」は3月上旬こそ50%台をほぼ維持したが、同月下旬以降は急速に低下し、5月12日に9・6%となった。

同時期の自宅療養者は1万5千人を超過。症状が突然悪化する事例もあり、第4波で医療を受けられずに死亡した患者は少なくとも19人に上る。

府は反省を踏まえ、第5波に入った直後の6月下旬、軽症でも基礎疾患や肥満など重症化リスクのある患者を入院させるよう保健所に周知した。第4波とは違い、高齢者へのワクチン接種が進んだこともあって、今月6日時点で重症病床の使用率は17・2%。ただ、軽症・中等症病床は51・7%に上り、油断はできない。

懸念は、保健所が入院を勧めても拒否し、命の危機に直面する患者が出始めていることだ。自覚症状がない場合や、家庭の事情で自宅にとどまることを選択するケースがあるという。

浅田さんは「今は治療薬もあり、早く治療すれば治る可能性が高いが、一般の人にどこまで浸透しているだろうか。新型コロナウイルスは急速に悪化する。異変に気付いたら早めに受診してほしい」と訴えた。

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