千夜一夜

人間の身勝手 イヌもネコもコロナ禍で受難

筆者が住むエジプトの首都カイロでは、街中のネコが東京よりのんびり暮らしているように見える。猛暑の折、石造りのアパートの入り口に寝ていても住民は何も言わないし、エサを与える管理人もいる。顔見知りになれば寄ってくるネコもおり、筆者のようなネコ好きにはたまらない。

中東でネコが大事にされるのは、イスラム教の預言者ムハンマドやその友人がネコ好きだったという伝承があるからだといわれる。現在のイランとイラクにまたがる地域を支配したブワイフ朝のある首長は愛猫を執務室に持ち込み、そのネコが用務を取り次いだという話も残っている。

もっとも、人々が伝承に縛られ続けているというわけでもなさそうだ。カイロではイヌを散歩させる人も結構見かけるし、「イヌを飼えるのは家や庭が広く、裕福であることの証しだ」というエジプト人もいる。

そのネコもイヌも、新型コロナウイルスの感染拡大では巻き添えを食った。

報道によるとエジプトでは昨年、ヒトのウイルス感染に関わりがあるのではと誤解した人々が、動物を獣医の診療所の前に置いていく事例が増えた。コロナ禍で経済低迷に拍車がかかったレバノンでは家計が圧迫されてイヌを捨てるケースが急増している。人間の身勝手であり災難というほかない。(佐藤貴生)