川井梨紗子 姉妹金で「幸せな日」 レスリング女子

女子レスリングで姉妹で金メダルを獲得した(左から)川井友香子、川井梨紗子=5日、幕張メッセ(納冨康撮影)
女子レスリングで姉妹で金メダルを獲得した(左から)川井友香子、川井梨紗子=5日、幕張メッセ(納冨康撮影)

川井家が夢見ていた一日となった。前回2016年リオデジャネイロ五輪女王の川井梨紗子(26)が5日、レスリング女子57キロ級決勝に臨み、攻守とも隙のない動きで完勝した。前日は妹の友香子(23)が62キロ級を制覇。五輪連覇と、同一大会での姉妹金メダルを、ともに達成した。「こんなにいい日が、幸せな日が、あっていいのかと」。感極まった。

一番下の妹を含む、3人姉妹の長女。ともにレスリング経験を持つ母の厳しさと父の優しさで、育った。

最初にマットに誘ったのは父の孝人さん(53)だった。小学2年の時、地元・石川県で12歳以下の大会に出場したが、結果は1回戦負け。号泣し「悔しさから本格的に練習するようになった」(孝人さん)。

礎は、金沢ジュニアレスリングクラブで指導していた母、初江さん(51)が築いた。「周りに『親子だから』といわれたくなかった」。褒めることはほとんどしなかった。

「どうして」と突っかかる梨紗子。険悪な様子で母娘が練習から帰宅すると、孝人さんが助け舟を出す。「買い物に行くか」と連れ出し、遠回りをして帰った。もやもやを吐き出させ、食卓は必ず一家全員で囲んだ。梨紗子はそうしてまた、マットに戻った。

今年6月、大きな大会の前には恒例の、石浦神社(金沢市)への参拝を家族で済ませた。願いは無論、2個の金メダルだった。

この日の決勝は終始、危なげない試合運びで押し切った。会場近くのホテルで見守った孝人さんは「最高の日になりました」。言葉は、娘と自然と重なった。

究極は、長らく日本女子レスリング界を牽引(けんいん)してきた、吉田沙保里さん(38)と伊調馨(いちょうかおり)さん(37)を「足して2で割った感じ」。吉田さんの素早いタックル、伊調さんの相手をいなす守備力。「めっちゃ高い理想」と笑うが、目標は常に上に置く。

女子レスリングが種目採用された04年アテネ大会以降、その2人がいない初の五輪。〝最強〟の継承へ、26歳は名実ともにその領域に足を踏み入れた。(森西勇太、小林佳恵)

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