久保「涙も出ない」最後の5分潜んでいた魔物

【東京五輪2020・サッカー男子準決勝】〈日本対スペイン〉延長後半、アセンシオにゴールを許し、がっくり肩を落とす久保建英(左)、森保一監督(右)ら日本イレブン=埼玉スタジアム(蔵賢斗撮影)
【東京五輪2020・サッカー男子準決勝】〈日本対スペイン〉延長後半、アセンシオにゴールを許し、がっくり肩を落とす久保建英(左)、森保一監督(右)ら日本イレブン=埼玉スタジアム(蔵賢斗撮影)

最後の5分間に魔物が潜んでいた。サッカー男子準決勝で3日、延長戦の末、日本が強豪スペインに敗れた。スペインで鍛えられ、現在はスペイン1部リーグで活躍するエース、MF久保建英(20)らの奮闘や、GK谷晃生(20)の再三の好セーブも実らずじまい。1968年メキシコ五輪以来の悲願のメダルは、53年前に銅メダルを争った因縁のメキシコとの3位決定戦に持ち越された。

0-0で迎えた延長戦後半10分、互いの好機を阻みあってきた死闘も残すところ5分の時点でスペインが先制。日本は追いつくことができないまま敗れた。延長戦を前に退いていた久保は、その光景をベンチから見つめるしかなかった。

試合後、第二の故郷、スペインを「うまかったし、強かった」と称賛。「負けたので、涙も出ない」と言葉少なに話し、ピッチを後にした。

強豪相手に一歩も引かず、何度も好機を作った日本。チームを引っ張ったエースは幼少期から技術力の高さで群を抜いていた。

「ものすごい子。正直、彼に教えたことは何一つなかったと思う」。川崎フロンターレの下部組織で小学3年生ごろに指導した長橋康弘さん(46)は振り返る。自ら練習を提案し「やってほしい」と持ちかけてくる。「自分の人生は自分で決める」。そんな意識を持った子だった。

名門バルセロナの下部組織に入団し、10歳でスペインに。帰国後は16歳でFC東京とプロ契約。さらにバルサと双璧をなすレアル・マドリードに移籍した。

期限付き移籍先のビジャレアルで指導してきたJリーグ常勤理事の佐伯夕利子さん(47)は「相手に『危険だ』と感じさせることができる選手」と評価する。

この日も後半33分に果敢なドリブルで相手陣営に切り込み、シュートを放ったが無得点。それでも佐伯さんは「まだ20歳。10年後の久保がどの位置にいるのか楽しみ」と期待を捨てない。歴史を塗り替えるのは常に若者。チャンスはまだ残されている。

(三宅陽子)

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