ボクシング・入江、無我夢中「気づいたら表彰台に」

女子フェザー級決勝で、ペテシオ(手前)を攻める入江=両国国技館(松永渉平撮影)
女子フェザー級決勝で、ペテシオ(手前)を攻める入江=両国国技館(松永渉平撮影)

3日に行われたボクシング女子フェザー級決勝で入江聖奈(せな)が金メダルを獲得した。

周囲を引き込む魅力的な笑顔がトレードマークの入江の瞳がうるんでいた。無我夢中でもぎ取った勝利だった。「気がついたら表彰台に立っていた。君が代が流れたときに、世界一になったんだと実感がわいてウルウルした」。

鳥取県出身。ボクシング漫画「がんばれ元気」に影響を受け、小学2年から競技を始めた。男子選手の動画を見たり、リストを鍛えて磨いたのが左ジャブだった。「左ジャブなら誰にも負けない自信がある」と言い切る武器で、この日の決勝でも主導権を握った。

第1ラウンド。体格差を生かし、距離を取っての左ジャブがさえた。拳に「当たった」好感触を残したが、第2ラウンドは相手の接近戦に苦しんだ。勝負の最終第3ラウンドは「強気を意識した」。打ち合いに引かず、攻め続けた。

「逆上がりができないほど運動が苦手」と明かす20歳。「努力をあきらめなかったら、何かをつかむことができる」と信じてたどり着いた頂点は歴史の扉をこじ開ける快挙でもあった。

2012年ロンドン五輪で正式種目になり、16年には全国高校総体の公開競技になったが、それでも国内女子の競技人口は少なく、約500人。競技普及のためには五輪での活躍が不可欠だった。

「ボクシングをしている女の子って聞くと、凶暴で気性が荒いと想像するかもしれないけど、そんなことはない。女子も盛り上がってくれればうれしい」

大学卒業後は競技から離れる意向を示したが、それまでにできることがある。「(今秋の)世界選手権で金メダルを取ること」。大好きなボクシングのため、もう一働きするつもりだ。

(田中充)

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