【話の肖像画】評論家・石平(59)(4)千年腐敗…脱却できない宗族主義 - 産経ニュース

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評論家・石平(59)(4)千年腐敗…脱却できない宗族主義

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《最新刊『中国共産党 暗黒の百年史』(飛鳥新社)には、権力を握った共産党幹部が、ケタ外れの私利私欲に走る異常な姿が描かれている》


共産主義の特異性として、人間性よりも、(共産)党としての原則が「上」に位置している、という点があります。極端に解釈すれば、党の利益のためには、人間性も捨てる、党を裏切った人間は殺しても構わない…つまり、党のためなら何をやってもいい、と解釈できるわけです。逆に、そうしない人間は、党に対する忠誠心が足りない、と批判され、粛清されてしまいかねない。

中国共産党の場合、これに加えて異常なのが〝ならず者〟を利用したことです。国民党が都市部の知識者層や地方の素封家(地主層)の支持を得たのに対し、共産党は、村八分にされた、犯罪者まがいの〝ならず者〟を利用して革命の核心的勢力にした。つまり、共産主義と〝ならず者〟の結合です。

繰り返しになりますが、彼らは土地の素封家を殺して土地や財産を奪い、代わりに農村の幹部として据えられた。これが「一村一焼一殺」という、毛沢東が主導した荒っぽい農村革命です。その結果、残ったのは血も涙もない人間性に欠ける連中だった。彼らが権力を握ったらどうなるか、火を見るより明らかでしょう。


《不正蓄財で摘発された中国共産党幹部を見ると、韓国の歴代大統領の事件のように、儒教による宗族(そうぞく)(父系の血縁集団)主義の悪(あ)しき伝統を感じる》


毛沢東は当初、中国の伝統的な宗族(一族)主義を、共産主義のアンチテーゼ(反対理論)として、壊そうとしました。前述した、荒っぽい農村革命がそれです。中国では、宗族から排除された人間は本来、まともに生きていくことができません。〝ならず者〟になるしかないのです。だからこそ、そうした連中を利用して宗族主義を壊そうと考えたわけですね。

毛沢東は、宗族主義を壊し、1950年代になって人民公社をつくります。農村における行政単位であり、教育、農業、工業などを包括する組織です。ところが、その中で圏子(チェンズ)と呼ばれる利益共有集団が構成されるようになり、結局、人民公社が宗族に取って代わっただけでした。


《平成30年に上梓(じょうし)した『中国人の善と悪はなぜ逆さまか』(産経新聞出版)は、中国人の〝変わらない〟価値観を描いた》


中国では昔から、一族から優秀な人間を科挙(かきょ)(官吏登用試験)に合格させるために物心両面で応援しました。そのための一族の財産が「義田(ぎでん)」、教育機関は「義塾」です。そして、高級官吏となった暁(あかつき)には、支援してくれた一族に利権や金銭を与えて面倒をみる。宗族主義の中ではそれも「善」となる。そこには国家や公(おおやけ)といった概念はありません。宗族(私)こそが大事なのです。

中国共産党も一旦、権力を握ると宗族の論理が働き、すべてを支配してしまう。幹部から小さな村の役人まで、不正蓄財の額は日本の汚職事件とは比較になりません。千年腐敗の基本原理から脱却できないのです。(聞き手 喜多由浩)

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