Dr.金のとちぎカルテ

クラスター防げ 企業活動守るPCR検査

宇都宮市の宇都宮脳脊髄センターで活用されている小型の全自動PCR検査装置(金彪さん提供)
宇都宮市の宇都宮脳脊髄センターで活用されている小型の全自動PCR検査装置(金彪さん提供)

新型コロナウイルスの猛威がとまらない。東京都では1日の感染者数が7月31日に4千人を突破、8月1日も日曜日としては最多人数を記録更新した。栃木県でも蔓延(まんえん)防止等重点措置が適用される方向となり、特にクラスター(感染者集団)の拡大防止が課題となっている。この解決策の一つとして期待できる小型の全自動PCRについて紹介したい。

新型コロナのワクチン接種は重症者数と死亡者数の減少など、一定の効果を出しているが、解決策ではない。世界で増えているデルタ変異株への対応が急がれているからだ。

デルタ変異株は体内で増殖が速く、ウイルス量も1200倍ほどと多くなるために感染力が強い。ワクチンを接種しても感染することが多くあることが判明している。接種後に感染した場合は、症状は軽くても、伝染させる力は持っている。

栃木県など北関東にとっても、対岸の火事とはいえない。栃木県では7月31日、170人の感染が確認された。7月19日から25日までの変異株の検査では、42%にデルタ変異株が検出された。数週間前から急増している。ここ数日は、東京の本社との往来がある企業の従業員とその接触者のなかに陽性者がでているとの情報がある。

とくに栃木県ではクラスターが目立つ。7月下旬だけでみても、県内高校生の同窓生の集会から7人、真岡市の個人宅の会食で11人、那須烏山市と佐野市の幼児保育施設でそれぞれ10人と14人、宇都宮市の事業所で従業員33人など、集団発生が相次いでいる。恐ろしいことに感染率は高く、前述の高校生同窓会においては参加した12人のうち7人が感染、個人宅会食は二十数人の参加者のうち11人が感染している。

クラスター感染が相対的に多いのは、主たる交通手段が公共交通でないこと、盛り場で密集状態が形成されることが少ないために、集団や家庭の中で伝染することの方が多いためだろう。

クラスターが発生すれば、操業の一時停止にいたる可能性が高い。その会社の活動を停止に追い込むだけでなく、サプライチェーンなども考えると、もっと広範なダメージも起こしかねない。

このようなリスクに対し、自衛できる有力な手段がある。従業者集団のメンバー全員に対して定期的にPCR検査を行い、絶えず陰性を確認していくことだ。

感染後、体内にウイルスが検出されるまでの期間はデルタ変異株で4日間、オリジナル株では6日間といわれている。デルタ変異株に感染後、さらに他人に感染させるような強い伝染力を持つまでの期間は、まだよくわかっていない。しかし数日に1回、または週に1回程度、集団内の固定的メンバー全員が感染していないことを確認できれば、クラスター発生を防ぐことができるだろう。

最近は、コンパクトで操作の簡単な全自動PCR検査装置が発売されている。例えば、島津製作所の全自動PCR検査装置「AutoAmp」は、試薬やバッファー(緩衝)液がすべてカートリッジに収められ、少量の液体を測定するピペット操作を一切しないで自動測定できる。4検体を2時間程度で処理でき、増殖されたウイルスの判定も容易である。機器は大きめのデスクトップパソコン程度で机上におけるし、測定も管理も特別な訓練を要さない。

本体は、中型乗用車1台分くらいの値段であり、カートリッジも比較的に低コストである。1日に8時間超稼働して、16検体を処理すれば、100人程度の職場なら、1週間に1回の検査ができる。さらに、4人ごとのグループに検体をまとめてプール検査を行えば、4倍の処理能力となりコストを節約できる。

このような小型の全自動PCR検査装置を事業所、学校や介護保健施設が自前で備えて定期的・予防的に検査をすれば、クラスターの発生拡大を防ぐことができる。ことに若い人に多い、無症状・無症候のウイルス保有者を早く見つけることが大事である。陽性者を早期に隔離することができれば、感染拡大を防ぐことができる。

こうした取り組みについて、われわれは「事業継続計画(BCP)のためのPCR検査」と呼んでいる。宇都宮市では、宇都宮脳脊髄センターが全職員の定期的予防検査を行っているほか、作新学院や宇都宮短期大学付属高校にも導入されている。医療機関の内部のクラスター発生を防ぎ、学校行事、修学旅行、対面授業などを守ってくれているが、企業の研究所や製造分門の活動も守ってくれることが期待される。(金彪)