「切り札」は丸刈り韋駄天 サッカー・FW前田

フランス戦の後半、ゴールを決める前田大然=7月28日、日産スタジアム(甘利慈撮影)
フランス戦の後半、ゴールを決める前田大然=7月28日、日産スタジアム(甘利慈撮影)

トレードマークの「丸刈り」は少年時代と変わらない。3日夜、1968年メキシコ五輪以来のメダルをかけてスペインと対戦するサッカー男子日本代表。途中出場で存在感を示すFW前田大然(だいぜん)(23)は、愛する家族のため持ち前のスピードを武器にピッチを駆け回る。

五輪では途中出場が続くが、1次リーグのフランス戦では、後半ロスタイムに初ゴールを挙げ、決勝トーナメント進出を決定づけた。「サブ(控え)の選手が結果を出すことでチームの士気が上がる」。準々決勝では出番がなかったが、ピッチサイドからチームメートを鼓舞した。

地元の大阪府太子町が原点だ。小学4年のとき、友人に誘われて「太子町ジュニアサッカークラブ」の練習に足を運んだ。コーチとして指導した松井勝也さん(58)は「練習は土日祝だけ。勝ち負けだけにこだわらず、うまい子も下手な子も一緒に楽しくサッカーをやるチームだった」と話す。

同世代のライバルと比較しても遅いスタートだったが、天性のスピードは群を抜いていた。松井さんは「足はピカイチに速く、すぐにトップスピードに入れる。対戦経験があるチームは2人がかりでマークすることもあった」と明かす。

初対戦のチームとの試合では、ゴールキーパーからのパントキックに一気に抜け出し、得点を奪うことも。スピードを生かしたプレースタイルは当時から変わらず、「もちろん技術もレベルも格段に上がっているけど、走り方や丸刈りも当時から同じ。今も試合を見ていると小学生のときの姿と重なる」と笑う。

高校からは故郷を離れて、全国優勝の経験もある山梨学院大付属高(現・山梨学院高)に進学。Jリーグへの道を開くと、海外にも挑戦した。

家族の存在も原動力になっている。五輪後に第2子が誕生予定といい、フランス戦のゴール後、ボールをユニホームの中に入れる喜びのパフォーマンスを披露。松井さんは「小さいときから家族思いで優しい子」と目を細め、準決勝を前に「大然らしいプレーをしてほしい」とエールを送る。

53年ぶりの五輪メダルを目指す大一番。「切り札」としての活躍が期待される背番号9は、静かにその出番を待つ。(鈴木俊輔)

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