自宅療養増加の東京、大阪の医療崩壊「再現」懸念

新宿駅周辺のビル群=東京都新宿区(本社ヘリから、佐藤徳昭撮影)
新宿駅周辺のビル群=東京都新宿区(本社ヘリから、佐藤徳昭撮影)

新型コロナウイルスの感染者が急増し感染第5波を迎えている東京都で、春の第4波で医療崩壊を招いた大阪府の「再現」が危惧されている。専門家は比較材料の一つに自宅療養者の増加を挙げ、今後の推移に注意を呼びかける。政府は自宅療養を基本とする方針を打ち出したが、高齢者に加え呼吸困難や肺炎の症状がある人も自宅療養となる可能性があり容体急変への対応が焦点となる。都は病院や宿泊療養など、全体の受け皿で医療崩壊を防ぐ考えだ。

「自宅療養者が増えると必要なケアを受けられない人が出てくるし、管理に人手が割かれ入院調整など自治体の他の業務を圧迫する恐れもある。医療崩壊の兆しとみており、このままだと大阪の二の舞いになりかねない」。西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏はこう指摘する。

さらに、「限界を超えると坂を転がり落ちるように膨れ上がり、悪循環に陥ってしまう」と今後の動向にも警鐘を鳴らした。

都内の自宅療養者は1万2千人を超えている。すでに第3波のピークを大きく上回り、連日過去最多を更新中だ。入院や宿泊療養の待機などを含めれば2万人近い可能性もある。都内の保健所長は「体調確認の業務が増加し、入院調整などに影響が出始めた」と明かす。

大阪府は3月以降の第4波で医療崩壊に直面した。4月13日に新規感染者が1千人を超え同規模が約3週間継続。重症者は5月4日に最大449人まで増え、重症病床だけでは収容しきれなくなった。

当時、自宅療養者は最大1万5千人を超え、病状悪化後も医療を受けられないまま19人が死亡。保健所の業務逼迫(ひっぱく)が一因で、感染者と連絡を取る前に亡くなる事例もあったという。自宅療養者の数だけ見れば、都内の水準はこれに近づきつつあるか、すでに上回っている。

ただ、当時と異なるのはワクチンの存在だ。65歳以上の高齢者の約4分の3には行き渡った。都の担当者は「今の自宅療養者は若・中年層が中心で、重症になった高齢者が自宅でバタバタと亡くなる事態は考えにくい」と語る。政府が重症者以外は原則自宅療養とし往診などで対応する新方針をまとめたのもこうした背景がある。

都は「今後の在り方として理解はできる」(担当者)としつつも、現時点では自宅より宿泊療養施設を優先する。看護師が常駐し、病状が悪化した際に医師が駆け付けるシステムも整っているからだ。

現在、都内に宿泊療養施設は3千人分あるが、看護師不足のため半数程度しか稼働していない。都は今後、看護師の確保を進めるなど宿泊療養施設の稼働率を高め、必要な自宅療養者の受け皿にするとともに、重症者らへの対応に専念できるよう医療機関の負担を軽減していく方針だ。