日常を一変させた静岡県熱海市の大規模土石流は3日、発生から1カ月となった。熱海市では発生時刻の午前10時半にサイレンを鳴らし、災害対策本部の職員らが犠牲者を悼んだ。
県と市は被災住民らの生活再建に本腰を入れる一方、依然5人の行方が分かっておらず、警察や消防は3日も捜索を続けた。住民の中には、起点での不適切な盛り土が被害を拡大させた「人災」の可能性があるとして、県や市、土地の所有者を相手取った損害賠償請求訴訟を検討する動きも出ている。
県などによると、これまでに22人の死亡を確認。不明者の捜索活動は住宅地に残った大量の土砂の影響で難航している。
悲しみ新た、住民復旧願う
多くの土砂が残る被災現場では重機の作業音が響き渡った。「早く元の生活に戻りたい」。犠牲者を悼むサイレンに、遺族は悲しみを新たにし、住民らは行方不明者の発見と早期の復旧を強く願った。
熱海市伊豆山地区では早朝の強い日差しが一転、午前中は雨が断続的に降る天気になった。蒸し暑く、がれきからかび臭いようなにおいが立ちこめる現場で、警察などが活動を続けた。
「嫌な夢を見ているよう。被害に遭った方に掛ける言葉がない」。自宅で生活を続けるパート従業員金沢由彦さん(62)は視線を落とす。昔住んでいた家は被害に遭い跡形も無くなったという。「行方不明の人が早く見つかるといい」と漏らした。