レスリング文田 磨いた投げ技封じられ…「猫レスラー」涙の銀 - 産経ニュース

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レスリング文田 磨いた投げ技封じられ…「猫レスラー」涙の銀

男子グレコローマン60キロ級決勝 キューバのルイスアルベルト・オルタサンチェス(上)に攻められる文田健一郎=幕張メッセ
男子グレコローマン60キロ級決勝 キューバのルイスアルベルト・オルタサンチェス(上)に攻められる文田健一郎=幕張メッセ

手首をつかまれ、徹底的に〝伝家の宝刀〟を封じられた。レスリング男子グレコローマンスタイル60キロ級で2日、文田(ふみた)健一郎(25)は決勝で敗れ、銀メダル。生来の柔らかい体をいかし、父、敏郎さん(59)から受け継いだそり投げを武器に「猫レスラー」の異名を持つ25歳は「自分の形にさせてもらえないことは分かっていた。研究の上をいけなかった、自分の実力不足」と、潔く敗北を認めた。

下半身への攻撃が禁止されているグレコローマンは、上半身で組み合うため力比べの要素が強い。隙を突いて繰り出されるダイナミックな投げ技が魅力だ。

父との特訓で、投げ技を磨いてきた。

敏郎さんはグレコの第一人者で、韮崎(にらさき)工業高校(山梨県韮崎市)のレスリング部監督を務め、ロンドン五輪金メダルの米満(よねみつ)達弘(34)らも育てた名将。文田は幼少期からレスリング場の端のマットで遊んでいた。

小学校時代の練習パートナーだった古宇田萌恵(こうだもえ)さん(27)=千葉県佐倉市=は、当時の文田を「弱くて、やる気もなかった」と振り返る。

それでも、敏郎さんは可能性を感じていた。生来、背骨が柔らかく、体を後ろに反ることを怖がらなかった。「私の息子だな、と」。中学1年で出場した全国大会で1勝したことが自信となり、マットの上で過ごす時間が増えていった。

そり投げが代名詞となり、しなやかな動きから、いつからか「猫」の名も冠するようになった。

世界選手権での金メダルも重ね、東京五輪も優勝候補筆頭とみなされたが、世界の目は、甘くなかった。

文田の投げを封じるため、相手は脇を固く締めたり、文田の手首をがっちりつかんだりした。寝技で相手を横転させるローリングを駆使し勝ち上がったが、1回戦からこの日の決勝まで、ついに一度もそり投げが決まることはなかった。

自宅でテレビ観戦した古宇田さんは「練習から逃げてばかりいた昔の健ちゃんは、いなかった。最後まで戦う姿を見せてくれて、ありがとうと言いたい」。

「勝って、みんなに恩返しがしたかった…」。涙を流し、言葉が途切れた文田に、拍手は間もなく届くはずだ。(浅上あゆみ)

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