朝晴れエッセー

白い毛・8月2日

実家で娘と遊んでいるときに、ふとズボンに目をやると、1本の白い毛が。いつもなら、さっと払うところだが、今は愛おしくてたまらない。

15年前「お母さんが世話することになるねんから絶対イヤ!」と、猛反対の中、私と父がいそいそと連れて帰ってきた愛犬「まる」。母はご立腹な様子だった。

しかし、私が仕事から帰ってくると、毎日うれしそうにまるの話をしてくる母。いつの間にか、まるのかわいさにどっぷりとはまっていた。

元気に過ごしていたまるだが、14歳の冬に、大病を患っていることがわかった。手術で命を落とすこともあると聞き、母と悩みに悩んで、家で好きなことをして、ゆっくり過ごさせてあげようと決めた。

それから1年後、私の娘が1歳になるのを見届け、まるは旅立った。誕生日会の写真には、まぶたがパンパンに腫れ、うれしいのか悲しいのか何とも言えない顔の私が写っている。

「毎日掃除しててもでてくるんやな。15年おったもんな…15年間しっかり飼わせてもらいました」。寂しさを吹き飛ばすかのように、私への皮肉を込めて母が言った。

そう、母の最初の言葉通りになったからだ。一番世話をしていたのも、一番まると過ごした時間が長いのも、まるがいなくなって一番寂しいのも母なのだろう。

「毛抜けて大変や!」と、掃除をしている母を横目に、まるがブルブルっと毛をまき散らしていたのを思い出す。

まるの落とし物はまだまだたくさんあるはず。今日もまた、そんな期待をしながら娘と実家に向かうのであった。

塚田裕美子(40) 大阪府羽曳野市