H難度シリバス…村上茉愛「人生で一番の演技」 1812日の努力結実

【東京五輪2020 体操】〈女子種目別決勝 床運動〉演技の冒頭、H難度の大技「シリバス」を決める村上茉愛の連続写真=2日、有明体操競技場(川口良介撮影)
【東京五輪2020 体操】〈女子種目別決勝 床運動〉演技の冒頭、H難度の大技「シリバス」を決める村上茉愛の連続写真=2日、有明体操競技場(川口良介撮影)

これまでの苦闘を表現するかのようなしゃがみ姿勢から、村上茉愛が立ち上がる。ラスト、後方の屈身2回宙返り。着地を止めると、うれしさが湧き出すような笑顔が広がった。14・166点、銅メダル。H難度の「シリバス(後方抱え込み2回宙返り2回ひねり)」をはじめとする宙返りの着地、ターンを次々と決める渾身(こんしん)の演技だった。

「体操人生の中で一番良い演技だった。自分で自分に金メダルをあげたい」

東京五輪への出発点は前回2016年リオデジャネイロ五輪の悔しさだった。種目別床運動決勝、ターンを失敗して7位。「試合を終えてメダルを取れそうな位置にいたんだと改めて分かったとき、『やめられない。体操をもっとちゃんとやりたい』となったんです」。この強い思いが、あれから1812日もの間、彼女を支えた。

道のりは厳しかった。年々、難しくなるコンディション維持。「ゴムまり娘」の愛称を持つほど瞬発力に優れ、「シリバス」を小学生のころから使ってきたが、跳躍の高さは徐々に落ちてきたと感じている。今大会に入ってからは右肘を痛めた。

学生時代は軽くストレッチをすれば練習に入れた。24歳となった今は1時間半も始動を早め、体をよくほぐし、基礎トレーニングをしてから本練習に臨む。テレビドラマで子役を務めた快活な性格で、「準備すら疲れちゃって、そんな自分がイヤになりますよ」と冗談めかして語っていたが、そんな毎日を積み重ねることは容易でなかったはずだ。

腰を痛めて歩くことすらままならなくなった19年など、心が折れそうだったことは一度や二度ではない。その度、第一人者の責任とやりがいに背中を押されてきたという。メダルを量産する男子を横目に、「女子も盛り上げたい」と国際舞台で活躍してきた。

「ジュニアの子たちが憧れてくれたり、『ここ教えてください』って言ってくれるのはうれしいし、それがあるから自分も頑張れる」

日本女子の五輪のメダルは1964年東京五輪の団体総合銅以来、57年ぶり。個人では史上初めてだ。

「世界選手権で2度メダルをもらっているけど、今回が一番重い。体操女子の良いアピールができたんじゃないかな」

競技人生の集大成として臨んだ今大会。首に掛けた歴史的偉業の証しをじっと見つめていた。(宝田将志)

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