サッカー男子の1次リーグを全勝で突破し、準々決勝はPK戦の末に勝ち上がった日本が3日、準決勝でスペインと対戦し、1968年メキシコ五輪以来のメダル獲得に挑む。メキシコでの銅メダルは、日本の五輪代表がサッカーで獲得した唯一のメダルだ。「歴史を塗り替えろ」。勝てば銀以上が確定する大一番。五輪史にその名を刻んだ伝説の男たちが、若きイレブンにエールを送る。
「そろそろメキシコ五輪は過去の話にして、新しい歴史を作ってほしい」
メキシコ五輪で得点王を獲得し、チームを引っ張った釜本邦茂さん(77)は力を込める。
当時、1次リーグを1勝2分けで突破した日本は、準々決勝でフランスに圧勝。だが、メダルに王手をかけた準決勝は優勝したハンガリーに0-5で大敗した。「全く歯が立たず、メダルを意識する余裕はなかった」と明かす。
3位決定戦の相手は大声援に後押しされる開催国のメキシコだった。DFとしてベンチ入りしていた鈴木良三さん(81)は「会場はメキシコ人ばかりで、飛び交う言葉もスペイン語。完全にアウェーで、重圧はものすごかった」と振り返る。
試合は前半に釜本さんが決めた2得点を守り切り、日本サッカー史上初の五輪メダルを獲得した。
その後、日本の男子サッカーは長く五輪から遠ざかる。28年ぶりに出場した96年アトランタ五輪では優勝候補のブラジルを破る「マイアミの奇跡」もあったが、1次リーグで敗退。2012年ロンドン五輪は準決勝で因縁のメキシコに敗れ、3位決定戦でも永遠のライバル韓国に負け、4位にとどまった。
今大会、メダル獲得には何が求められるのか。
「『死に物狂いで勝つ』という〝力強さ〟が必要だ」と説くのは、釜本さんとの名コンビで銅メダルに貢献した杉山隆一さん(80)。「僕たちはリフティングが10回もできないぐらい下手だったけど、力強さはあった」と当時を振り返る。
今大会のイレブンは「見ていて本当にうまい。細かいパス回しから得点し、守備への切り替えも早い」とする一方、「選手たちは世界を相手にしているプロ。プロフェッショナルとは何かを考えて戦い抜いてほしい」と注文を付ける。
「地の利があり、非常に良い成績を残すチャンス」。メキシコ五輪でDFとして全試合に出場した片山洋さん(81)は、当時と違って地元開催であることが有利な点とみる。ポイントは、やはり「勝ちへの貪欲さ」。「4強に残った国はどこも勝利への執念は段違いのはずだ。気を引き締めて臨んでほしい」と期待を込めた。
準決勝は強豪・スペインとの大一番だ。片山さんは「半世紀前の銅メダルなんて、もう腐っちゃうから早く次のメダルを取ってほしい」と話し、「銅はもうあるからいらないよ」と準決勝での勝利に向けて辛口のエールを送った。(鈴木俊輔、竹之内秀介、永井大輔)