東京都では新型コロナウイルス感染者のうち30代以下が占める割合が7割を超え、急増している。65歳以上の高齢者にはワクチンがほぼ行き渡った半面、若者への接種の本格化はこれから。経済活動の中核を担う20~30代は高齢者以上に感染の危険と隣り合わせといえ、職場やSNSなどさまざまな面で対策が欠かせない。(大森貴弘)
「一部のテレビ報道などでは、まるで路上飲みで若者に感染が広がっているような印象を受けるが、実態は意外とそうでもない。職場が多い」
東京都の担当者は若者の感染状況についてこう明かす。7月29日の都の会議では、感染経路の分かる人のうち職場感染の割合が15・4%で、同居人(55・8%)に次いで2番目に多いことが示された。感染第3波の真っただ中だった1月14日の6・9%から10ポイント近く増えた。職場感染は年代別でみると、7割前後が20~30代となっている。
こうした傾向を受け、小池百合子知事も以前は「路上飲みをやめて!」などと訴えていたが、最近は「テレワークの定着や長期休暇の積極取得を」などと、事業者への協力呼びかけにシフトした。
とはいえ、「会食による感染はやはり若者が目立つ」(都担当者)といい、飲み会やバーベキューなど若者の活発な行動による感染例も少なくない。緊急事態宣言の延長が決まって初の日曜日となった1日には、渋谷センター街は大勢の若者でにぎわった。
都は2日以降、青山学院大など3大学に、都内の大学生全員を対象としたワクチン会場を開設するが、若者の間ではワクチン接種を避ける傾向がみられる。国立精神・神経医療研究センター(東京)による調査では、15~39歳の2割弱が接種を希望しなかった。
友人と渋谷に遊びに来ていた男子大学生(22)は「ワクチンを打った知り合いは高熱など副反応で大変だった。そこまでして打つ必要があるかとためらいがある」と語った。一方、「若くて健康なら重症化しないのは明らか。ワクチンの副反応より、実際に感染して免疫をつける方が楽かもしれない」(20代の男性公務員)とする声もある。
若者の間で広がる危機感の薄れに、国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は「特に変異株は若い世代でも重症化リスクがあると強く啓発する必要がある」と指摘。小池氏は1日、SNSなどを念頭に「20代でもワクチンという武器を手に戦わないといけないと改めて発信したい」と述べた。