話の肖像画

評論家・石平(59)(1)「中国共産党の正体」を見誤るな

評論家の石平氏(鴨志田拓海撮影)
評論家の石平氏(鴨志田拓海撮影)

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《傲岸不遜な振る舞いで国際社会の秩序を揺るがす故国は、今や〝制御不能のモンスター〟と言うべきか。その手ごわい相手とペンで対峙(たいじ)し続けてきた。7月に党創建100年を迎えた中国共産党の政権である》


1988(昭和63)年に初めて日本へ来たとき、驚いたことがあります。留学先の大学の図書館や古書店で求めた中国の近現代史の本の多くが、中国共産党の主張する歴史観、そのままに書かれていたことです。

つまり、アヘン戦争(1840~42年)以降、中国は、外国の列強と内部の反動勢力(国民党)によって人民は抑圧され、地獄のような暮らしを強いられてきた。疲弊しきった状況の中で共産党が立ち上がり、人民を率いて敵を打ち破り、素晴らしい中国をつくって人民を救った…などという解放史観、革命史観ですね。もちろん、とんでもない間違いです。

かくいう私も少年時代には、先のような近現代史観を共産党の教育によって教え込まれました。1980年に(北京)大学へ入り、民主化運動に加わり、徐々に「真相」を知るようになったのですが、日本へ来たら逆戻り(苦笑)。

蔣介石の国民党が「悪玉」であり、共産党は「善玉」というようなパターンが、なぜ民主主義の日本で氾濫しているのか? 中国では禁止されている台湾や香港で出版された本も日本では自由に手に入るのに、まるで中国共産党宣伝部の指示そのままに従っているかのような書きぶりでした。

《最新刊『中国共産党 暗黒の百年史』には、陰謀や裏切り、粛清、虐殺…など、先の公式史観では決して語られない「事実」を赤裸々につづった》


私がどうしても書きたかった本です。仲間同士の殺し合い、人民に対する多くの犯罪、周辺の少数民族に対する弾圧…。こうした都合の悪い事実は共産党の史観には一切ない。意図的に排除しているからです。いまだに、中国共産党に都合のいい歴史だけで構築されている。本当の姿を日本人に知ってもらいたかったのです。


《1972(昭和47)年の日中国交正常化は日本にとってはほとんどメリットがなかったという》


当時、中国はソ連(当時)や多くの東欧諸国と対立し、孤立を深めていたのです。そこで中国は生き残りをかけてアメリカのニクソン(大統領)を招き、同じ自由主義陣営の日本に近づいたのです。それなのに中国は高みに立ち、日本に対して一方的な要求を突きつけ、〝日本たたき〟を続けた。日本は平身低頭して無理難題に応じる…といったパターンの繰り返し。私に言わせれば正常化ではなく「不正常化」の始まりです。

その間、中国は日本から資金と技術をたっぷり受け取り、日本は失うことばかり。世にも不思議な関係ですよ。「日中友好」もいいが、日本人は本当の中国共産党の姿を見なければなりません。(聞き手 喜多由浩)

【プロフィル】石平

せき・へい 1962年、中国・四川省成都市出身。北京大学哲学部卒。1988(昭和63)年、日本へ留学。神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。評論活動へ。中国を中心に朝鮮半島や日本の伝統、精神などについての著作も多い。平成19年、日本国籍を取得。最新刊は『中国共産党 暗黒の百年史』(飛鳥新社)。産経新聞に「石平のChina Watch」を連載中。

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