政府のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の改定素案が示された。脱炭素化に向けて太陽光などの再生可能エネルギーを主力電源と位置付け、石炭や液化天然ガス(LNG)などの化石燃料を使う火力発電比率をどこまで引き下げるかが素案の焦点だった。
結局、2030年度の電源構成として、再生エネや原発など非化石電源比率を6割に高める一方、化石電源比率を4割に下げる目標が打ち出された。非化石電源比率を全体の過半に増やすことで、日本が脱炭素化に取り組む姿勢を明確化した。
自民党からは赤点評価
だが、この素案の評判がすこぶる悪い。有識者からは「あまりにも実現可能性が低い」と酷評され、自民党のエネルギー関係議員からは「宿題の答えを出していないので赤点だ」と突き上げられる始末である。
4月時点で菅義偉首相は、30年度までに二酸化炭素(CO2)排出量を13年度比で46%減らす方針を対外公約しており、今回の素案で示された30年度の電源構成はその辻褄(つじつま)合わせに追われた印象が強いからだ。
課題とされてきた原発の建て替え(リプレース)や新増設は今回も計画への明記が見送られ、原発をめぐる思考停止から脱却できなかった。
エネルギー政策基本法にもとづいて策定されるエネルギー基本計画は、ほぼ3年ごとに改定される。そこで示される電源構成をみれば政府が描く将来像が分かる。現行計画の30年度の電源構成は再生エネ22~24%、原発20~22%と非化石電源は44%にとどまり、化石電源比率が56%と過半を占めている。東京電力福島第1原発事故を受けて策定された電源構成目標がそのまま踏襲されてきた。今回はその電源構成を6年ぶりに見直し再生エネを大幅に増やすことで、化石と非化石の電源比率が初めて逆転する。それでも原発比率は現行計画の水準を維持するのにとどめたため、非化石電源の伸びは中途半端で、一定規模の化石電源が残る構成になった。
脱炭素化に向けて非化石電源比率を伸ばしていく方向にはだれも異論はない。だが、大雨や台風の脅威が強まり、山裾に設置した太陽光パネルが崩落する被害も相次ぐ中で、太陽光発電所の開発を規制する条例を設ける自治体も増えている。
また、その太陽光パネルは中国からの輸入が大半を占めており、米国はウイグル産のパネル部材を制裁対象に追加したばかりだ。再生エネの拡大に向けて安定的な部品調達網が確保されているとはいえない。