話の肖像画

デザイナー、コシノジュンコさん(81)(30)人生が変わる一着を

私の立場は、「必需品」とは対極にあると考えている。そして、そこになじむこと、迎合することはしない。一線を画していたいのです。

ファッションにも、さまざまな側面がある。質や量、価値観、アートなど、いろいろな顔があると考えます。その中で私は、何よりも「価値観」で勝負をしている。私の仕事は、衝撃的な服との出合いを見せることです。

普段の生活ではなく、人生には「ここぞ」という場面が必ずある。いい仕事をしたい、絶対に成功させたい、すてきな人に会う、人生の節目、ハレの日-。特に今の世の中は、実際に人と会って話すという機会が減っている。だから、その出会いというチャンスで、良い緊張感が生まれ、服がそっと力を貸してくれる。そんな存在でありたい。

そして、見る人の印象にも影響を与えたい。例えば、コンサートだったら。音楽を〝聴きに行く場〟だけれど、しっかり見ながら堪能しますよね。耳と目から得られる情報で感動を生み出さなければならない。だから、指揮者だったら背中に、ピアニストだったら客席に見えるよう、右腕に重点的にデザインを施そうと考えます。

一方で、服を着る場面はファッションショーではなく、モデルが着るわけではない。理想を追及して、背伸びをし続けることも重要だが、その人自身がしっかりと着こなしながら、存在感を際立たせる服を提供したいと、常に考えています。

服とは、究極の自己表現のツールだ。

たった一枚で人生が変わる〝勝負服〟。そういう服を、まだまだ作っていたいのです。(聞き手 石橋明日佳)

=明日から評論家、石平氏

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