中国共産党の習近平総書記(国家主席)が来年秋の党大会で異例の長期政権実現を目指す中、8月上旬頃に開催が見込まれる「北戴河(ほくたいが)会議」の動向が注視される。党創建100年などを通じ着々と習氏の権威強化が図られており、習体制の継続に向けた人事調整が焦点。現地では早くも厳戒態勢が敷かれている。
北戴河会議は、党指導部や長老らが河北省の避暑地、北戴河に集まって行う非公式会議。毛沢東時代に始まり、重要政策や人事について党指導部の合意形成を図る場となってきた。
記者が29日朝に鉄道で北戴河駅に到着すると、改札口付近には多数の制服警官がいた。すぐに「詳しく確認したい」とパスポートを取り上げられた。数分後、私服警官に「飛行機の搭乗記録で新型コロナウイルス感染者が出た都市に行っていたことが分かった。すぐに帰れ」と告げられた。
その都市を訪れたのは2週間以上前であり、感染者が出たのは記者の訪問後だったが、警官は「街に入るなら隔離が必要だ」ととりつく島がなかった。その後、北京に戻る列車が発車するまで付き切りで監視を続ける警戒ぶりだった。
河北省張家口から観光に来たという30代の女性は「飲食店でもチェックが厳しく楽しめなかった。新型コロナと『会議』のせいだろう」とぼやいていた。
北戴河会議は習氏の続投に向けた重要行事と位置づけられている。6月に68歳になった習氏は来年の第20回党大会で「68歳定年」の慣例を破り、3期目入りを視野に入れる。7月には党創建100年の祝賀大会や初のチベット自治区視察を成功させた。
焦点の一つは人事で、李克強首相(66)の後任人事の調整が注目される。憲法の規定で李氏は2023年に退任する。首相は副首相経験者からの起用が慣例で、年齢から胡春華(こ・しゅんか)副首相(58)が有力候補とされる。ただ、習氏が距離を置く共産主義青年団(共青団)グループ出身である胡氏の起用をめぐり激しい駆け引きがあり、習氏とつながりが深い上海市トップの李強(り・きょう)市党委書記(62)や、広東省トップの李希(り・き)省党委書記(64)の名前も取り沙汰されている。
一方、習氏が敵対する政治勢力の党高官を反腐敗闘争で失脚させるなどして党内基盤を固めたため、北戴河会議の重要性は低下し、習氏が現地入りしない可能性もささやかれている。(河北省北戴河 三塚聖平)