エースが突き、最年少が決めた フェンシング団体「金」

男子エペ団体準決勝 韓国選手(左)と対戦する加納虹輝=幕張メッセ
男子エペ団体準決勝 韓国選手(左)と対戦する加納虹輝=幕張メッセ

フェンシング男子エペ団体決勝。突きが入ったことを示すマスクのランプが点灯した瞬間、左手で控えめにガッツポーズしたチーム最年少剣士、加納虹輝(こうき)(23)を中心に歓喜の輪が広がった。同種目初の金メダルをつかみ取った。

加納、山田優(まさる)(27)、宇山賢(さとる)(29)の3選手はロシア・オリンピック委員会(ROC)を相手に序盤から果敢な攻めを見せ、控えとなった見延(みのべ)和靖(34)もベンチから声を枯らして応援。チームは終始リードを守って世界一の座を引き寄せた。

「金メダル取ります」

1回戦から勝利の原動力となった加納。山口県立岩国工業高校フェンシング部で指導した本間邦彦監督(43)は決勝前、加納の決意を電話で聞いた。

剣士としての加納は高校で開花した。本間監督は「目立つタイプではなかったが、誰よりも練習した」と振り返る。知略、戦略が重要視されるエペで、加納は持ち前の体幹の強さと、そこから繰り出される正確な突きに加え、「賢さがあり自分で組み立てのできる選手」と本間監督は太鼓判を押す。

金メダルを決めた最後の相手は、25日のエペ個人で敗れたセルゲイ・ビダ(28)。「一度負けた相手に二度と負けない」の信条通り、ビダを寄せ付けず、頂点をつかんだ。試合後、「まだ信じられない。これが夢ではないことを祈っている」と語った加納。ベテランとしてチームを引っ張っていた見延をはじめ、メンバー全員と面識がある本間監督は「新しい歴史を作ってくれてありがとう」とねぎらった。

一方、決勝戦の第1試合でビダと対戦した山田は、ゆったりとした動きと鋭い剣さばきでリードを奪い、試合の流れを作り出した。世界ランキング4位で日本代表のエースとも呼ばれる山田だが、子供のころは小児喘息で体が弱かった。

競技を始めたのは小学2年のころだ。母の歩南(ほなみ)さん(59)は「争う姿勢は全くなかった」と振り返る一方、「どんどんのめりこんで、よく寝ながら剣を振るように手を動かしていた」と笑う。

頭角を現したのは中学生からだ。三重県立鳥羽高校に進学後は、2年連続でインターハイ優勝。しかし、山田の姉もフェンシング選手として既に活躍しており、道具代や海外遠征費を捻出し、山田と姉を育てるため仕事を掛け持ちする歩南さんを見て、山田は「高校卒業後は競技を辞めて働く」と申し出たという。

「私が頑張って働いて子供たちを試合に出させてあげなきゃと思っていたので、『何をばかなことを言っているの』と引き留めた」と歩南さん。母の思いを背負って日大に進学し、日の丸を背負うまでに成長した。

今大会のエペ団体では全試合に出場し、チームを牽引した。「最初に勢いをつけたら勝てると信じていた。その勢いに乗って優勝できてうれしい」。母の支えを受けて大成した「孝行息子」は決勝の大一番を終え、満面の笑みを見せた。

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