比、米軍地位協定の破棄を撤回 中国への懸念を共有

30日、マニラで手を振るオースティン米国防長官(左)とフィリピンのロレンザーナ国防相(ロイター=共同)
30日、マニラで手を振るオースティン米国防長官(左)とフィリピンのロレンザーナ国防相(ロイター=共同)

【シンガポール=森浩】フィリピンのロレンザーナ国防相は30日、国内で米軍の活動を可能にする「訪問軍地位協定(VFA)」の破棄撤回を決めたことを発表した。一方的に協定破棄を宣告していたドゥテルテ大統領が方針を変更した。両国の同盟に決定的な亀裂が生じる事態は回避された形で、中国が実効支配を強める南シナ海情勢にも影響を与えそうだ。

破棄撤回はフィリピンを訪問したオースティン米国防長官との共同記者会見でロレンザーナ氏が明らかにした。協定はフィリピン国内での合同軍事演習などを可能にしており、失効すれば米国の地域での存在感低下は避けられない状況だった。会見でオースティン氏はフィリピン側に謝意を示し、「強固な同盟関係はインド太平洋地域の安定と繁栄に不可欠だ」と述べた。

協定をめぐっては、ドゥテルテ氏が2020年2月に破棄を一方的に通告。強権的な「麻薬撲滅戦争」を指揮した自身の側近に対し、米国が入国ビザ(査証)を取り消したことへの対抗措置とされる。その後、協定の失効日は複数回延長されたが、米比関係にすきま風が吹く形となった。

その間、中国は南シナ海での実効支配を強化。今年3月にはフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内に約220隻の中国船団が停泊した。一貫して対中融和姿勢を示してきたドゥテルテ氏だが、米軍との協定を維持することで海洋進出を強める中国を牽制(けんせい)したい思惑が働いたもようだ。

会員限定記事会員サービス詳細