朝晴れエッセー

母の梅酒・7月30日

毎年夏になると、スーパーの店頭に梅酒の手作りセットが並び始める。

今まではまったく興味がなかったのだが、今年はなぜか母が昔よく梅酒を漬けていたことを思い出し、無性に自分でも梅酒を作ってみたいと思ったのだ。

母が亡くなって4年。その前に7年ほど介護施設に入所していたので、10年以上も前の話である。

母と同居していた私は、床下収納庫を陣取る梅酒やかりん酒などを漬け込んだ瓶が邪魔でしょうがなかった。

よくそのことで母と衝突した。またその頃の私は、さほど梅酒がおいしいとは思っていなかった。今思うと、あの頃母と一緒に梅酒を作り、飲み頃になるのを2人で「楽しみだね」なんて、心待ちにしたりすればよかった。

先日、ふと職場の先輩に話したら、「お母さんに報告してみたら? 喜んでくれると思うよ」と言ってくれた。

ところがその翌日、不思議なことが起きたのだ。

偶然隣に住む80代のご主人から、奥様がたくさん作っていた梅酒を保存瓶ごと2つもいただいたのだ。驚いた。お隣さんとは梅酒の話など一度もしたことがないのだ。

その晩私は、母が生前とても親しくしていただいた奥様の手作りの梅酒を、母の仏壇の前で一緒にいただいた。コクのある深い味わいでおいしかった。

しばらくは、お隣の奥様の作った梅酒を楽しむことにしよう。


芹川世津子(59) 埼玉県越谷市