「トイレカー」熱海土砂崩れで後方支援 神田消防署に初配備

神田消防署で4月下旬から運用が始まった「トイレカー」(東京消防庁提供)
神田消防署で4月下旬から運用が始まった「トイレカー」(東京消防庁提供)

災害現場などに出動している消防職員らを後方支援するため、4月から東京消防庁で運用されている「トイレカー」が、7月3日に静岡県熱海市で発生した大規模土石流で、都外では初となる被災地派遣に赴いた。トイレカーとはトイレ機能に特化した車両のことで、災害現場での長時間に及ぶ活動や女性消防職員の増加を踏まえて導入された。熱海市の被災地では1週間にわたって活動し、救助作業に当たる職員らの支援に当たった。

プライバシーに配慮

同庁の神田消防署(千代田区)に配備されたトイレカーは、防火衣などを着用する場合でも使いやすいよう、内部が広めに設計されている。スペースは男性用と女性用に分かれており、車両中央部の男性用には小便器や2つの個室がある。小便器は洗浄水が不要なもので、大便器には新幹線などでも使用される「真空吸引式」を採用した。

車両後部にある女性専用の更衣室兼個室には、着替え台も設置されている。窓は曇りガラスになっているほかカーテンも設けられており、プライバシーにも配慮された造りだ。

同庁によると、トイレカーの配備は全国の消防本部で初めてとみられる。これまで災害現場で活動している消防職員らがトイレに行きたくなった際は、近隣の住宅や商業施設のものを借りていたといい、同庁の担当者は「着ているものは、火事のすすなどで汚れていることもある。申し訳なさから借りにくいという状況もあった」と明かす。

「心理的負担少しでも」

特にトイレで困るのは寒い冬場や、長時間に及ぶ活動の場合だ。同庁の管内では大規模な火災など、活動が4時間以上となる災害が年間で約250件発生。また、女性消防職員の数が平成23年から令和2年までの10年間で、約300人増加していることも導入の背景にあった。配備先となった神田消防署は高速道路にも近く、都内全域に展開しやすいなど交通の便の良さから選ばれたという。

土砂崩れ現場では、警察や消防、自衛隊などによる捜索が続いていた=7月4日午後、静岡県熱海市伊豆山(松本健吾撮影)
土砂崩れ現場では、警察や消防、自衛隊などによる捜索が続いていた=7月4日午後、静岡県熱海市伊豆山(松本健吾撮影)

今月、熱海市で発生した大規模土石流の被災地では3~10日の約1週間にわたって活動。約450人からなる東京都大隊の宿営地に展開し、職員らを支えた。同庁は「円滑な後方支援に貢献できた」と強調する。

近年は全国的に大規模な自然災害も多く、避難所などで使用するため自治体がトイレカーを導入する例もある。「トイレという心理的負担を少しでも取り除くことで、現場で活躍する消防職員らの後方支援体制を強化し、男性はもちろん、女性の活躍の助けにもなってほしい」と、同庁の担当者は期待を込める。(太田泰)