フェンシングの男子エペ団体で山田(自衛隊)宇山(三菱電機)加納(JAL)見延(みのべ)(ネクサス)の日本は決勝でROCを45―36で下し、悲願の金メダルを獲得した。
勝利が決まった瞬間、ピスト上に歓喜の輪ができた。全身のどこを突いても得点となるエペ。見延が「(フェンシングで)一番わかりやすい」という種目で、世界の頂点に。山田は「夢みたい。まだ信じられない」と声を弾ませた。
金メダルへのカギは初戦の米国戦にあった。最大8点差をつけられたが、調子の上がらない見延に交代して出場した宇山が大活躍。逆転勝利で流れをつくると、続く準々決勝では世界ランキング1位のフランスに競り勝ち、完全に勢いに乗った。
準決勝の韓国戦、決勝のROC戦は早々にリードを奪い、そのまま勝ち切った。大会前から言い続けてきた「史上最強」を結果で証明した。
日本フェンシング界は2008年北京五輪で太田雄貴が男子フルーレ個人で日本初のメダルを獲得。12年ロンドン五輪では同団体銀に輝いた。23歳の加納は北京五輪の日本の活躍を「かっこいい」と思い、フェンシングを始めたという。五輪のメダルが将来のメダリストを生んだ好例だろう。
この種目でフェンシングの本場・欧州勢以外の国が五輪の金メダルを取ったのは初めて。見延は「日本は一番多くの競技人口があり、頂点に立てたことはすごい意味がある」と胸を張った。観客はいなくても、国内外に与えたインパクトは計り知れない。「濃い、熱い一日になった。特別な五輪」。見延はそう言って、胸の金メダルをなでた。(森本利優)