朝晴れエッセー

新しいバネ・7月29日

通勤で最寄り駅と職場間に乗る自転車。

もともとは中古車、軽微な故障以外なら修理よりいっそ買い替えた方が安い。一応、使い捨てには抵抗を覚える方だが、それでも寿命と割り切り、結局は後者を選ぶだろう。

そんなわが「哀車(あいしゃ)」、チェーンがガコガコと音を発し、そのうちに外れた。伸びきってたるんだのだ。

タイヤ交換より安いのでチェーンの交換修理に出したが、やはり随所にガタがきている、と自転車屋には本体買い替えを勧められた。

なるほど確かに指摘された前輪もツルツル。次の不具合がいよいよ潮時かな、と思う数日後、今度はスタンドのバネが外れて倒れやすくなった。このままでは駐輪場で隣の自転車に迷惑がかかりそう。

これは…直す必要あり、か?

翌々日の出勤時。遠目に映ったのは駐輪場のスタッフのおじさんと見慣れた自転車。私のだ。

近づくと「おう、これ、直したよ」。なんと、どこからかバネを調達してスタンドに付けてくれたのだ。

「直さなきゃと思っていたんです。工賃を取ってくださいよ」と言うと、「なに、かまへんがな」とマスク越しに満面の笑顔で「こうして巡回しながらな、目につくのは直してんのやで。間に合(お)うてよかった。行ってらっしゃい」。

パンクしたら即乗り換えるという計画、見直そうかな。新しいバネにおじさんの笑顔がちらつく。

大村昌 48 兵庫県川西市