東京五輪の男子テニスシングルス準々決勝で、前回大会銅メダルの錦織圭(日清食品)は世界ランキング1位のジョコビッチ(セルビア)に2―6、0―6で敗れた。
世界ランキング1位の壁は厚かった。前回リオデジャネイロ五輪の銅に続く2大会連続のメダルを目指した錦織だったが、ジョコビッチの前に「何もできなかった」。試合時間わずか1時間10分の完敗だった。
過去の対戦成績は錦織の2勝16敗。最後の勝利は準優勝した2014年全米オープンまでさかのぼる。「最後までラリーして食らいつく」と左右にショットを散らしたがことごとく拾われ、逆に振り回された。両セットとも最初のサービスゲームでブレークを許しては、「精密機械」相手に挽回は難しかった。
新型コロナウイルス禍で開催された五輪。自身も昨年感染し「死人が出てまで行われることではない」と開催を疑問視したこともある。一方で「唯一、自分のためだけじゃない(大会)。応援してくれる人がいる中で、もうちょっといい結果を出したかった」とも。五輪の価値を認めるからこそ、悔しさも募る。
けがもあって世界69位まで落ちたが、同7位を破るなど存在感も示した錦織の東京五輪が終わった。「感覚が取り戻せた。充実した1週間だった」。母国で確かな再上昇のきっかけをつかみ、世界での戦いに舞い戻る。(森本利優)