新聞社の騒がしさ、情報漏れ防ぐ「テレキューブ」 ウェブ会議増で人気の個室ブースの効果とは

産経新聞メディア営業局がオフィスの一角に導入した1人用のテレキューブ。
産経新聞メディア営業局がオフィスの一角に導入した1人用のテレキューブ。

テレワークやワーケーションなど働き方の柔軟性が増し、働く場の在り方が変化している。新型コロナウイルスの影響に加え、業務のデジタル化が進み、会社員もオフィスに縛られず自宅やコワーキング施設、カフェなどを自由に選ぶスタイルが浸透。仕事内容や生活に応じて選択の幅は広がったが、ウェブ会議などで雑音や人目を気にせず繊細な会話を交わし、機密性の高い資料も閲覧できるスペースは意外と少ない。この課題に頭を悩ます企業の一つとして産経新聞メディア営業局が、オフィスや公共施設に設置が相次ぐ個室ブース「テレキューブ」を導入し、新たな働き方にふさわしい環境作りに取り組んだ。

ニュース速報や上司の大声が響く社内

「本日ご提案しましたタイアップ企画の内容で、ご不明な点などはございませんでしょうか」。メディア営業局クロスメディア1部の浦井正浩部次長はプレゼンテーションを終えるとこう問いかけ、モニター越しの広告主企業の反応に耳を澄ませた。6月末にオフィスの一角に設置したテレキューブ内で、初めてのウェブ会議。扉の外は通信社が断続的に流すニュース速報の放送や、周囲の雑音に呼応するような上司の大声など新聞社特有の騒がしさであふれるが、室内は適度な静けさに包まれていた。

テレキューブの外ではニュース速報の放送や電話の着信音、打ち合わせの声などで音があふれるメディア営業局のフロア。
テレキューブの外ではニュース速報の放送や電話の着信音、打ち合わせの声などで音があふれるメディア営業局のフロア。

外部の音が気にならないよう遮る一方、壁に吸音材を使って内側からの反響や音漏れを防ぐ設計で、浦井部次長は「自分の声が伝わるし、相手の言葉も確実に聞こえる。見積り金額の提示など重要な場面でも相手が理解しているかどうか反応や様子がわかるので、お互いの認識に齟齬(そご)が生じることがない」と安堵(あんど)の表情をみせる。備え付けのデスクに外からの視線はほぼ届かず、見積りなどセンシティブな情報を含む資料もモニターで気兼ねなく共有できたという。

【テレキューブ導入の効果】

オフィスのウェブ会議は上司の大声や、同僚の目が気になるが、テレキューブ内ならば雑音や人目は気にならず集中できる。(Illustration:Kasumi Okazawa)
オフィスのウェブ会議は上司の大声や、同僚の目が気になるが、テレキューブ内ならば雑音や人目は気にならず集中できる。(Illustration:Kasumi Okazawa)

製造業や金融、通信など主要産業の企業を部下7人と担当する立場として、社内の部会や媒体別の会議のほか、広告代理店、企業との打ち合わせで平日はスケジュールが埋まる。昨春の緊急事態宣言以降、ほぼ全てリモート(遠隔)に移行して継続しているが、苦慮したのが最適なスペース探しだ。

会議室の空き探して社内を流浪

ウェブ会議は自宅でも実施するが、広告主企業への提案などは資料がそろうオフィスで行うことが多い。当初はパーテーションで仕切るのみのスペースを利用し、「周囲の音を遮れないので、真剣にプレゼンをしているときに背後で笑い声が起きて雰囲気が台無しになったこともあった」。このためリモートでも会議室を押さえるようにしたが、数少ない予約枠の空きを探して社内中をさまよう“放浪状態”に陥ったうえ、5人以上が入る広いスペースを1人で使う際は後ろめたさを感じることもあったという。

これに対し、メディア営業局が導入した1人用のテレキューブは1.2メートル四方、高さ2.3メートルの省スペース。従来の応接ブース一つを撤去し、代わりに2台を設置したところ、2~3人掛けのソファとほぼ同じ幅に収まった。

不足しがちな会議室を1人で使う無駄がなくなり、オフィススペースを有効活用。(Illustration:Kasumi Okazawa)
不足しがちな会議室を1人で使う無駄がなくなり、オフィススペースを有効活用。(Illustration:Kasumi Okazawa)

一方で、室内は天井が高く、足元もゆったりとスペースを確保し、身長183センチと大柄な浦井部次長も「1時間座っていても窮屈に感じなかった」。導入から約1カ月がたち、ほかの社員からも「社内でマスクを外して会議ができ、リモートでも初対面の相手に顔を覚えてもらえる」(企画担当の20代女性)、「静かな室内に入ると、大切な会議に臨む気持ちに切り替わる」(デジタル広告担当の20代男性)など効果を実感する声が上がる。

天井が高いので、密閉空間でも息苦しさを感じない設計。マスクを外して仕事ができるため、使用後には必ず消毒・除菌を徹底するルールを設けている。
天井が高いので、密閉空間でも息苦しさを感じない設計。マスクを外して仕事ができるため、使用後には必ず消毒・除菌を徹底するルールを設けている。

コロナ契機に累計販売5倍超

テレキューブは、ウェブ会議システムやイベントのオンライン化を手掛けるブイキューブが2017年に発売。当時、国内でオフィス向けの可動式ブースは珍しく、消防法などの規定を所管官庁と協議・確認しながら、簡易スプリンクラーの設置や不燃材の採用、警報音が聞こえる程度の遮音性など安全性に万全を期した。パイオニア企業として積み重ねた法制度や、それにかなうレイアウト設計などの知見に加え、1人用から1対1の面談に使える2人用、グループ向けの4人用までそろえるラインアップを武器に、コロナ禍前の19年12月までの3年間で累計384台を販売した。

天井には簡易スプリンクラーや換気ファンを付け、安全性と快適性を確保(左)奥行き50㌢のデスクはノートパソコンと資料を一緒に置いても十分な広さで、コンセントも完備している(右)
天井には簡易スプリンクラーや換気ファンを付け、安全性と快適性を確保(左)奥行き50㌢のデスクはノートパソコンと資料を一緒に置いても十分な広さで、コンセントも完備している(右)

当初は企業が人事評価の面談などのスペースとして導入する2~4人用の需要が中心だったが、コロナを契機に1人用のニーズが膨らみ、20年末には累計2055台(サブスクリプション〈定額課金契約〉を含む)と5.3倍に急拡大している。背景には「働き方が変わっているにも関わらず、オフィス環境はその変化に追いついていない現状」(間下直晃社長)がある。

同社が4月に会社員を対象に実施したネット調査(※)によると、19年以前に比べてコロナ流行後にウェブ会議が「増えた」「どちらかといえば増えた」と回答した人は計80.3%に上る。会議室不足などの理由で、オフィスの自席で行ったことのある人は71.2%に達する一方、周囲でウェブ会議をする人を「うるさい」と感じた経験の有無は46.5%が「ある」として、現状への不満を浮き彫りにしている。

(※)調査対象:東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県のいずれかに居住する第1回・第2回の緊急事態宣言期間中の両方で月1回以上のウェブ会議を行っていた会社員498人。

フリーアドレスの短所を補完

実際、産経新聞メディア営業局もオフィスのリニューアルを進めるなかで、テレキューブに出合った。19年4月に働き方改革関連法が施行し、業務の効率化や勤務形態の多様化が多くの企業の課題になるなか、関連業界への広告企画を考える自社から働く場を見直す必要があると判断。昨年9月には縦割りが残る組織の壁をなくし、コミュニケーションを活性化するため、自由に席を選べるフリーアドレス化に踏み切った。

所属する約50人の固定席を廃止し、代わりに6~8人が共有する大型デスクを設置。リニューアルを進めたデジタル広告担当の日下紗代子は「共有デスクなら(感染対策の)アクリル板越しでも簡単な打ち合わせはできるので、会議室不足の解消にもつながると思った」と振り返る。

昨年9月にフリーアドレスを採用した直後のメディア営業局のフロア。従来の部署別の固定席を撤去し、オープンな雰囲気に。
昨年9月にフリーアドレスを採用した直後のメディア営業局のフロア。従来の部署別の固定席を撤去し、オープンな雰囲気に。

しかし、コロナの影響が続き会議はリモートが中心になる状況では、オープンな空間というフリーアドレスの長所が、人目や雑音を遮れないという短所に変わるケースも生じた。社内で機能を補うスペースを検討したが、オフィスビルに入居するテナント企業としてフロア内に個室を新たにつくるのは工事や費用などのハードルが高い。結果、可動式のため工事不要で、導入費用が抑えられるテレキューブに白羽の矢が立った。

日下は「レイアウト変更にも柔軟に対応できるので、コロナ後の働き方の変化も見据えて活用していきたい」と話した。

テレキューブは19年10月にオフィス向けのサブスクリプションモデル、今年2月には低価格のエントリーモデルも追加し、ラインナップやサービスを拡充。

ブイキューブプロダクト推進チームプロデューサーの小塚雄基さんは「ウェブ会議などワークスペースとしての需要が中心だが、プライバシーを保ちマスクも外せる空間は、オンライン英会話などの習い事や、保険や住宅、ブライダルの相談にも活用できる。かつての公衆電話のようなインフラとして、展開を広げていきたい」と語った。

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▼導入ビフォーアフターの動画

提供:株式会社ブイキューブ