柔道男子100キロ「金」ウルフ 負けない柔道結実

男子100キロ級決勝で韓国の趙グハム(右)に一本勝ちしたウルフ・アロン。金メダルを獲得した=日本武道館
男子100キロ級決勝で韓国の趙グハム(右)に一本勝ちしたウルフ・アロン。金メダルを獲得した=日本武道館

東京五輪柔道男子100キロ級で29日、2000年シドニー五輪以来となる快挙を日本柔道界にもたらしたウルフ・アロン。「泥臭い柔道を最後まで貫いた」。華麗さからはほど遠い武骨なスタイル。追究し続けた「負けない柔道」が結実したそのとき、込み上げた感情を抑えきれず、大きな手のひらで顔を覆った。

9分35秒に及んだ決勝戦。韓国の趙(チョ)グハム(28)が疲れをにじませる一方、持ち前のスタミナで果敢に攻め、大内刈りで鮮やかな一本勝ちを決めた。

「TOKYO2020」と記されたカードが掲げられた。テレビの向こうで五輪開催が決まった瞬間を、高校からの先輩でもあるトレーナーの前村良佑さん(32)と目に焼き付けた。13年夏のことだ。

「アロン、五輪に出て、俺を専属トレーナーにしてくれよ」。冗談めかして話しかけた前村さんに、まっすぐなまなざしで応じた。「一緒に行こう!」

自己紹介の常套(じょうとう)句は「こんな見た目ですが、英語は全く話せません」。米国出身の父と日本人の母の間に生まれ、6歳で柔道を始めた。講道館(東京)の春日柔道クラブで初めて体験した柔道は「面白かった」。本心ではなかった。身長130センチ、体重30キロ。恵まれた体格に期待する周囲の大人たちに気を使った。

練習をいやいやこなしていた。思うような成績を残せず、中学ではパワーを生かした柔道が年下相手にも通用しなくなった。その悔しさが転機となった。

当時の指導者、向井幹博さん(59)は「自ら練習の意味を考えて取り組むようになった」と振り返る。走り込みなど基礎的なトレーニングで徹底的に自分を追い込んでいった。

その柔道に華麗さはない。むしろ、勝負を急がず、スタミナを生かした「負けない柔道」にこだわってきた。いつしか延長戦が「ウルフタイム」と呼ばれるほどになった。

夢の頂点。前村さんも泣いた。準決勝前、ウルフの体をケアした後、グータッチで送り出した。「彼の夢は僕の夢でもあった。かなえてくれてありがとう」(松崎翼)

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