柔道女子78キロ「金」の浜田「寝技の女王」世界に証明

【東京五輪2020 柔道】 〈女子78kg級 決勝〉 浜田尚里対マロンガ(仏)。優勝し、金メダルを獲得した浜田=29日、日本武道館(納冨康撮影)
【東京五輪2020 柔道】 〈女子78kg級 決勝〉 浜田尚里対マロンガ(仏)。優勝し、金メダルを獲得した浜田=29日、日本武道館(納冨康撮影)

29日に行われた東京五輪の女子柔道78キロ級決勝。試合開始からわずか1分足らずで畳に抑え込んだ。20秒。一本勝ち。頂点に立った直後は表情を崩さなかった浜田尚里(30)だが、畳から下りると、ようやくほほえみ、涙をみせた。「得意の寝技で勝ててよかった…」。声を詰まらせた。

30歳10カ月での金メダルは日本柔道史上最年長。この日の4試合全てで、対戦相手をことごとく寝技で制し、「寝技の女王」の本領を発揮した。決勝戦でフランスのマロンガ(27)を打ち破ったのも寝技の崩れ上四方固めだった。

瞬発力が必要な投げ技を短距離走とするならば、寝技は長距離走だ。練習を重ねた分だけ上達し、修練の深さの証明となる。

その原点は、鹿児島県立鹿児島南高時代にある。全国を目指すため、得意とする選手が少ない寝技を柔道部員一丸となって磨いた。頭角を現したのが、浜田だった。当時の監督、吉村智之さん(45)は「寝技は基本的な練習の繰り返し。飽きてしまいがちだが、浜田は一つ一つ全力でこなしていた」と語る。

日本がボイコットした1980年モスクワ五輪の「幻の代表」で「寝技の神様」と呼ばれた柔道家、柏崎克彦さん(69)の本をむさぼり読み、映像を見返して目に焼き付けた。

その姿勢は山梨学院大時代も揺らがなかった。「彼女は相手が大きくても小さくても、先輩でも後輩でも、決して練習の手を抜かない。いつも全力」。同大の監督、山部伸敏さん(52)はこう語る。

卒業後に進んだ自衛隊体育学校(埼玉県朝霞市)では、他の選手の強化合宿中、駐屯地の門に立つ警衛の仕事をしたことも。体育学校の隊員がやらないような任務だが、前向きだった。こうした任務をこなす周囲の隊員に支えられていることを実感したからだ。

この日、浜田の故郷でもある鹿児島県霧島市の自宅で応援した吉村さんは「寝技を活路に、鹿児島一になり、日本一になり、世界一になった。極めたのは、努力しかない。この日まで、よく頑張った」と教え子の快挙をたたえた。(本江希望、田中充)

会員限定記事会員サービス詳細