健康カフェ

(205)お酒がやめられなくなったら早めに相談

ビールがおいしい季節、などという言葉をよく耳にしますが、酒飲みは理由があっても、なくても大体、いつでも飲むものです。適量で終われるうちはいいですが、ついつい飲み過ぎることが頻繁になってくると、いろいろな問題が起こってきます。肝臓をはじめとした臓器に障害を起こしたり、事故や転倒などでけがをしたり。もっとひどくなると、飲酒に対する制御がきかない状態になります。

40代半ばの女性が夫に付き添われて受診しました。数年前から糖尿病があり、ほかの病院で治療を受けていましたが、半年前から中断してしまったそうです。糖尿病が悪化しているのではないかと心配してこちらを受診しました。見た目にもやつれているほか、黄疸(おうだん)も出ているようで、問題は糖尿病だけではなさそうです。詳しくうかがってみると、何年も酒量が多い状態が続いており、最近ではお酒ばかり飲んで、食事もあまりとっていないということです。

血液検査の結果、糖尿病も悪いのですが、ひどい肝障害と電解質異常を認めました。そのまま近くの病院へ入院してもらいました。

お酒に対する欲求が抑えられない、酒量が制限できない、お酒が切れると汗や震えが出て落ち着かなくなる、といったことが続くようならアルコール依存症である可能性が高いといえます。特にこの新型コロナウイルス禍で、休業や失業など身の回りの状況が大きく変わり、人とのつながりも少なくなっている中、アルコール依存症の人が増えつつあることが指摘されています。

アルコール依存症は、専門の医療機関で治療を受けるべき疾患です。現在日本には100万人ほどのアルコール依存症がいるとされますが、治療を受けているのはその5%程度です。治療の基本は断酒ですが、1人で断酒することは難しく、医療機関や周囲の人の支えは必須です。また、同じようにお酒に悩みを持つ人同士の自助組織である断酒会の利用も効果的です。最近では、主に軽症者を対象にお酒を完全にやめるのではなく減らしながら治療していく方法を採用している施設もあります。

この女性患者さんは、入院管理によって、肝機能障害や電解質異常は改善したとの報告を受けました。今後は糖尿病治療を続けることもさることながら、禁酒を続けていくことがとても重要です。彼女が多くの支えを得て断酒が成功することを切に願っています。

(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)

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