一方、手嶋氏側は社団ホームページで公表した文書などで平成30年以降、高倉氏と社団法人の間に不透明な資金移動があったなどと主張する。これに対し、高倉氏は手続きに問題はあったと認めた上で「草創期の活動資金を立て替えたもので、監査での指摘を受け、契約を結び清算し直した。手嶋氏も代表理事として承認している」と反論する。
今年に入り、高倉氏ら草創期を支えたメンバーと手嶋氏側の間で、代表理事の地位などをめぐり、複数の仮処分申し立てなど法廷闘争が繰り広げられる。
プロジェクトで制作し、蝶屋で保管していた着物と帯について移管を求める手嶋氏と、これを拒絶する高倉氏の間で折り合いがつかない状況も続く。高倉氏は「プロジェクトの理念を理解しているとはとても言えない手嶋氏に貴重な制作物は渡せない。ほとんどの制作者やスポンサーも同意見だ」と説明する。
「イマジン」
23日に開かれた東京五輪開会式では、世界5大陸の代表歌手が元ビートルズのジョン・レノンの名曲「イマジン」を熱唱する映像が流れた。高倉氏が社団法人の名称の由来とし、プロジェクトのコンセプトを着想したきっかけとなった曲だ。
世界はきっと、ひとつになれる-。
KIMONOプロジェクトは、ジョン・レノンが歌に込めたメッセージをもとにスタートした。ただ、その思いを国内外に訴える以前に、プロジェクト自身がひとつになれず漂流している。着物にとっても関係者にとっても不幸な状況に陥っている。
高倉氏は「五輪の開会式後、国内外から改めて制作へのエールを多くいただいた。それらの声に応えるためにも一刻も早くプロジェクトを初心に戻すべきだ」と語った。
一連の経緯について手嶋氏は産経新聞の取材に対し「(不透明な資金移動問題では)令和元年になって5年さかのぼって精算したが、不自然すぎる。(高倉氏の主張は)全て事実無根だ。不正行為を糾弾したことに対する報復として事実無根の情報を(SNSなどで)流布され、当惑している」などとコメントした。(中村雅和)