遅咲き27歳・新井、無名から頂点へ 柔道女子70キロ級金 - 産経ニュース

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遅咲き27歳・新井、無名から頂点へ 柔道女子70キロ級金

【東京五輪2020 柔道】柔道女子70キロ級決勝 金メダルを手にする新井千鶴(左から2人目)=28日、日本武道館(恵守乾撮影)
【東京五輪2020 柔道】柔道女子70キロ級決勝 金メダルを手にする新井千鶴(左から2人目)=28日、日本武道館(恵守乾撮影)

早熟な才能がせめぎ合う日本柔道界にあって、高校3年まで無名だった。柔道女子70キロ級で金メダルをもぎ取った新井千鶴(27)。「自分が1番になるんだという思いで積み上げてきた」。初出場の大舞台で頂点に立った瞬間、まぶしい笑顔を咲かせた。

28日の準決勝では、16分41秒に及ぶ死闘を制した。約2時間後の決勝では、開始1分あまりでオーストリアのポレレス(24)から小外刈りで技ありを奪い、優勢勝ちした。

「日の丸をつけて、世界で戦いたいです」

高校2年の秋。進路を尋ねた柔道部の柏又洋邦(かしまた・ひろくに)監督(54)に、はっきり答えた。全国大会の経験すらなかった。真に受けなかった柏又さんが数日後に再び問うと、むっとした。「この前、言いましたよね」

柏又さんは「一度決めたことは絶対にやり通す生徒だった」と振り返る。

小学1年で柔道を始めた。埼玉県寄居町の男衾(おぶすま)柔道クラブ。「一緒にやるか」。3つ上の兄にくっついて道場を訪れた少女に、笠原則夫代表(60)がこう尋ねると、ためらいもしなかった。「やる!」

のめり込んだ。中学時代には、乱取りで一方的に攻めに攻め、息の上がった恩師に「たばこはもうやめる」と決意させたほどに才能をふくらませていく。だが、結果が出なかった。

高2の暮れ、63キロ級から70キロ級へ転向した。硬派な性格ゆえに「別の階級に逃げたくない」と渋ったが、腹を決めると食事を徹底的に改め、太りづらい体質を克服して体をつくった。

中量級の70キロ級は1つ下の63キロ級に比べ、じっくり組み合う展開となりやすい。幼少期から鍛えた足技が生きた。戦績は急上昇。高3でインターハイに初出場し、初優勝を飾った。

この日、初めて挑んだ五輪の舞台でも、インターハイの時と同様、一気に頂点へ駆けあがった。「全ての人に感謝したい」と語った教え子に、自宅で応援した笠原さんは「こっちが感謝だよ」と目を潤ませた。遅咲きの花だった。しかし、まばゆいばかりに咲き乱れた。(根本和哉)

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