米軍のイラク戦闘任務、年内終結 中東政策に転換点

バイデン米大統領は26日、ホワイトハウスでイラクのカディミ首相と会談し、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)掃討名目で同国に駐留する米軍の戦闘任務を2021年末までに終了させることで合意した。アフガニスタン駐留米軍の撤収を8月末までに完了させるのに続き、イラクでも正式に戦闘任務を終えることで、01年9月の米中枢同時テロ以降の軍事的関与を中心とした米国の中東政策は大きな転換点を迎える。

バイデン氏は会談で「今後のイラクでの役割は、ISの再台頭に備えて(同国部隊を)訓練し支援することだ」と述べ、テロ対策などを含む連携を強化する考えを強調した。カディミ氏は「両国の関係はかつてなく強い」とし、米国からの投資や新型コロナウイルス対策での支援などに期待を示した。

米国はブッシュ(子)政権下の03年、当時のフセイン政権が大量破壊兵器を保有しているとしてイラクへ侵攻。しかし大量破壊兵器は見つからず、同国の治安維持や反米武装勢力との戦闘のため、07年の最大時で約17万人を派遣する泥沼に陥った。イラクでの戦闘などによる米兵死者は4千人を超す。

14年にISが台頭し、同国などの一部を支配して以降は、対IS有志連合を率いて空爆作戦などを主導する半面、駐留部隊の主任務をイラク治安部隊などの訓練にシフト。駐留規模は約2500人まで減少していた。

フセイン政権崩壊後のイラクでは、イスラム教シーア派の隣国イランが影響力を拡大させている。近年は、米軍が駐留するイラク軍基地などに親イランのシーア派民兵組織による攻撃が続発。今回、米軍の戦闘任務終了が決まったのは、イランからの圧力を受けたカディミ政権の要請によるものだ。

バイデン政権高官は「戦闘任務が終結してもイラクへも関与は継続する」としているが、現実に米軍のプレゼンス(存在感)が低下する中では、イランのさらなる影響力拡大に対抗するのは難しいとの見方が一般的だ。

一方でバイデン政権は、覇権的な行動を強める中国への対処に注力するため、中東への関与を低下させる道筋を模索しているとみられている。バイデン政権にとっては、イラクでのイラン伸長が周辺アラブ諸国の警戒を呼び起こすなどして域内の不安定化につながることがないよう、イラク情勢の手綱を握れるかが今後の課題となる。(ワシントン 大内清)