ドゥテルテ比大統領、娘後継で権力維持模索か

【シンガポール=森浩】来年5月に大統領選が行われるフィリピンで、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領(76)が退任後も権力を維持する姿勢を示している。憲法規定で再選できないドゥテルテ氏は副大統領選出馬を示唆。大統領職には長女で南部ダバオ市長のサラ氏(43)が意欲を示した。親中姿勢を貫くドゥテルテ氏の去就は南シナ海情勢にも影響を与えるだけに「ドゥテルテ一家」の動向は注目を集めそうだ。

「麻薬との戦いは長い道のりだ」。ドゥテルテ氏は26日、任期中最後となる施政方針演説で、2016年の就任以来推進してきた容疑者殺害も辞さない麻薬撲滅戦争を継続する方針を強調した。ドゥテルテ氏は今月上旬、与党「PDPラバン」との会合で副大統領選出馬を「真剣に考えている」と表明した。6月に麻薬撲滅は「やり残したこと」とも述べている。

フィリピン憲法は大統領の任期を1期6年までと定めている。大統領選と同時に副大統領も有権者の直接選挙で選ばれるが、大統領経験者の立候補を妨げる規定はない。

ドゥテルテ氏は、新型コロナウイルスのワクチン接種の遅れなどで批判を浴びてはいるが、国民的人気は根強い。地元調査機関の「副大統領選で誰に投票するか」を問うアンケートでドゥテルテ氏は18%でトップ。同調査で大統領選について聞いた結果、28%で首位だったのがサラ氏で、親子が正副大統領を務める可能性は十分にある。

ドゥテルテ氏が権力維持を狙う理由については臆測があるが、後任が「反ドゥテルテ」となった場合、麻薬撲滅戦争での超法規的な措置などを訴追される可能性があり、それを避けるためとの見方もある。

ただ露骨な「ドゥテルテ王朝」形成の動きには反発が起きている。与党幹部で世界的ボクシング選手のパッキャオ上院議員(42)は、ドゥテルテ氏の後継と目されていたが、ドゥテルテ氏に対抗する姿勢を見せ、自らの出馬を模索しているとされる。

世論調査でリードしているドゥテルテ親子だが、選挙戦となれば中国との距離感も焦点となりそうだ。ドゥテルテ氏は経済支援を見込んで中国接近を進め、仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)が南シナ海での中国の主権主張を退ける判断を示した裁定を「紙くず」と呼び批判している。

フィリピン国内では、ドゥテルテ氏の融和姿勢に乗じるように南シナ海の実効支配を強める中国に対する反発が強い。中国の投資は「(国内に)大きな利益をもたらしているとは言い難い」(地元電子メディア、ラップラー)との指摘もある。親中姿勢が親子の選挙戦の不安要素となる可能性がある。