Q 80代の男性です。10年ほど前に血液検査で血清クレアチニン値が上昇したため1カ月に一度、泌尿器科を受診していましたが、今年6月の血液検査で前立腺特異抗原(PSA)値が4カ月前の5・2から6・2へと上昇。コンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像装置(MRI)検査でも白い陰が認められ、医師から「前立腺がんの可能性がある」と言われました。近くPSA再検査を行いますが、とても心配です。
A PSAの方は年齢を勘案した場合、がんを強く心配するほどの水準ではありません。PSA値が短期間で1~2ポイント上がるというのはよくあることで、再検査では逆に数値が下がったりもするのです。次回の検査で、仮にPSA値が7~8くらいに上がったとしても、あまり心配しなくてもよいでしょう。問題はMRIの陰の方ですね。
Q 医師からは、がんの位置をより正確に把握できるよう、超音波撮影した画像とMRIの画像を融合した画像を見ながら、病変を採取して調べる「生検」をする高度な前立腺生検を勧められましたが、先進医療なので保険がきかないそうです。
A その検査法は料金も高く、今回、そこまで必要なのかは正直言って疑問です。超音波だけを使う普通の生検で十分でしょう。それなら保険もききます。それ以前に、再検査したPSA値が分かった時点で、MRI検査のコピーをもらい、生検の適応についてセカンドオピニオンを受けることをお勧めします。ところで、他の病気の既往歴はいかがでしょうか。
Q 12年前に心筋梗塞を患いステント(網状の筒)を挿入しています。腎機能も低下しています。
A 前立腺がんの検査を受けるなら、こちらの状況が心配ですね。心臓の血管(冠動脈)に、再び心筋梗塞を起こすような変化が起きていないか確認が必要です。というのも、麻酔をかけて生検を受けている最中に心筋梗塞を起こすと、大変なことになってしまいかねないからです。腎機能の低下も、動脈硬化が原因かもしれません。
現在は、前立腺がんの疑いが多少あるというだけで非常に高いというわけではありません。生検を受けるにしても心臓と腎臓の状態が大丈夫か、主治医に聞いてみることが先決です。心臓と腎臓をチェックしてもらって、それから前立腺がんの心配をしたらどうでしょうか。前立腺の方は、それほどあわてて対応する必要はありませんから。
Q 心臓の検査を受けるとなると、体への負担も大きいのではないでしょうか。高齢なので心配です。
A 血管の異常がないかどうかは確認しておいた方がよいです。心臓の状態は、心臓カテーテル検査や造影CT検査でなくても、負荷心電図や造影剤を使わないMRI検査でも把握できます。それが絶対に必要かどうかは分かりませんが、麻酔をかけて生検をするなら、念のためちゃんと見ておいた方がよいでしょうね。(構成 佐藤健二)
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回答は、がん研有明病院顧問(泌尿器科)の福井巌医師が担当しました。
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