「選定保存技術保持者」に埼玉・熊谷の花輪さん 掛け軸の部品製作

花輪滋実さん(花輪ろくろ工房提供)
花輪滋実さん(花輪ろくろ工房提供)

文化財の保存に欠かせない伝統的な技術を持つ「選定保存技術保持者」に、埼玉県熊谷市の木工・漆工技術者、花輪滋実さん(74)が認定されることになった。国の文化審議会が文部科学相に答申した。選定保存技術は掛け軸や巻物に使われる「表具用木製軸首製作」で選定されるのは国内初。

軸首は「軸先」とも呼ばれ、書画などを収めた掛け軸などの下部の左右の部分を指す。円柱状で、巻いて収納する際に手を添える部分でもあり、掛け軸を安定させる役割もある。

軸首は損傷したりなくなったりしやすい部品で、修理の際は新調されるケースが多いとされる。近年は需要の減少とともに製作者も減り、良質な材料の入手が難しくなってきていることから、優れた製作技術を後世に残す必要があると判断した。

今回の選定では、木材を回転式の削り器「ろくろ」で加工し、表面に漆を塗って光沢感を出す軸首の製作技術が評価された。

花輪さんは県立熊谷高校を卒業後、祖父の代から続く家業の木工挽物に従事。卓越した挽物技術を生かして製作された木製軸首は国の重要文化財の修理に使われたこともあり、「掛幅の形態をとる文化財の保存には欠かすことができない」(同市関係者)という。

平成元年の日本伝統工芸展で初入選し、12年の県美術展覧会では県知事賞を受賞した。日本工芸会正会員などとして、工芸作品の普及や後進の育成にも尽力している。

県内ではこれまで、漆工芸の製作や漆工品修理の漆塗りに用いられる「漆刷毛製作」や、雲母などを使って木版摺で紙に模様をつける「唐紙製作」などが選定保存技術として選ばれている。(中村智隆)