「黒い雨」訴訟上告見送りに関する首相談話要旨

「黒い雨」訴訟について上告断念の方針を表明する菅義偉首相=26日午後、首相官邸(春名中撮影)
「黒い雨」訴訟について上告断念の方針を表明する菅義偉首相=26日午後、首相官邸(春名中撮影)

「黒い雨」訴訟判決について、どう対応すべきか、熟慮に熟慮を重ねてきた。その結果、今回の訴訟の原告の皆さまについては、原子爆弾による健康被害の特殊性にかんがみ、国の責任において援護するとの被爆者援護法の理念に立ち返って、その救済を図るべきであると考えるに至り、上告を行わないこととした。

皆さま、相当な高齢であられ、さまざまな病気も抱えておられる。そうした中で、1審、2審を通じた事実認定を踏まえれば、一定の合理的根拠に基づいて、被爆者と認定することは可能であると判断した。

今回の判決には、原爆の健康影響に関する過去の裁判例と整合しない点があるなど、重大な法律上の問題点があり、政府としては本来であれば受け入れ難いものだ。とりわけ「黒い雨」や飲食物の摂取による内部被曝(ひばく)の健康影響を、科学的な線量推計によらず、広く認めるべきだとした点については、これまでの被爆者援護制度の考え方と相いれないもので、政府として容認できるものではない。

政府としては、本談話をもってこの判決の問題点についての立場を明らかにした上で、上告は行わないこととし、84人の原告に被爆者健康手帳を速やかに発行する。同じような事情にあった方々については、訴訟への参加・不参加にかかわらず、認定し救済できるよう早急に対応を検討する。