【主張】高温ガス炉再稼働 失われた10年を取り戻せ - 産経ニュース

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主張

高温ガス炉再稼働 失われた10年を取り戻せ

わが国のエネルギー問題の解決につながる新展開として期待したい。

日本原子力研究開発機構の「高温工学試験研究炉(HTTR)」(茨城県大洗町)が今月末に再稼働する見通しだ。

HTTRは「高温ガス炉」と呼ばれるタイプの次世代小型原発だ。

高温ガス炉では普通の原発とは異なり、水の代わりに黒鉛とヘリウムガスを使う。空だきによる炉心溶融などの過酷事故は原理上、起こり得ず、安全性が極めて高い。

東京電力福島第1原発事故を機に原子力発電の安全性向上が希求されるようになり、米国や英国、カナダなどでも高温ガス炉の研究開発が活発化している。

1998年に運転を始めたHTTRは、高温ガス炉の開発で世界の先頭に立っていたのだが、福島事故で国内の他原発同様、長期停止を余儀なくされていた。

今年に入って原発の新規制基準に沿った安全対策工事もすべて完了したことから、近日中に再稼働を迎える運びとなったのだ。

HTTRの研究陣には10年間に及んだ運転停止による開発の遅れを取り戻すべく、実用化に向けて全力を挙げてもらいたい。

軽水炉と呼ばれる従来型原発の新増設は、次期エネルギー基本計画の素案にも盛り込まれなかった。しかし、太陽光など再生可能エネルギーの主力化は電力の安定供給面でのリスクが高い。

従来の原発に対する国民の不安感が、その利用への障壁になっているのなら、政府は今後の退役原発の補完や新設に、安全性の高さを最大の特長とする高温ガス炉を充てるべきである。

950度もの高温を生み出せる国産高温ガス炉は、高効率のガスタービン発電を行うと同時に水の熱化学分解で水素を生産するという一石二鳥の原発だ。熱源炉として使えば製鉄もできる。

しかも分散型電源に適した小型モジュール炉(SMR)の性格も備えている。2050年の「カーボンゼロ」を目指す日本にとっては不可欠の次世代原発だ。

ようやく実現するHTTRの再稼働だが、10年間の停止中に中国が別タイプの高温ガス炉で台頭した。性能は劣るが、普及力ではあなどれない。

政府はHTTRを通じ、国産高温ガス炉の開発を急ぐべきだ。脱炭素社会への切り札となる。