1~6月に休廃業・解散した旅行業の企業が前年同期に比べて約2倍の96件となり、過去最多になったことが26日、帝国データバンクの集計で分かった。ホテル・旅館業も約1・6倍の104件で過去2番目の多さ。新型コロナウイルス禍で政府の観光支援策「Go To トラベル」の停止や、東京五輪・パラリンピックの海外観客の受け入れ断念などで事業の先行きが見通せず、「あきらめ型」の企業活動停止が増えたとみられる。
帝国データバンクは負債を抱えた倒産以外の企業活動を停止する休廃業・解散の数を調査。事業の先行きが不透明な中で傷口が浅いうちに選択する「あきらめ型」のケースなどがあるため、件数に苦境の度合いがあらわれるとされる。
集計を実施している平成12年以降、旅行代理店など旅行業の1~6月の件数はおおむね20~50件で推移し、昨年同期は前年比で4件増の49件。ホテル・旅館業は19件減の67件だった。
これらの業種は東京大会によるインバウンド(訪日外国人観光客)増加を見込むなどして事業を計画。コロナ禍の痛手は大きいものの、昨年同期は政府の資金繰り支援に加え、観光需要を喚起する「Go To」への期待感などから件数が抑えられたとみられる。
しかし、その後、「Go To」は停止。人流抑制を伴う緊急事態宣言が繰り返され、今年3月には東京大会での海外からの観客の受け入れ断念も決定した。今年1~6月は全業種の件数が2万8400件で前年同期に比べて1380件減となる中、旅行業が47件増、ホテル・旅館業は37件増という結果になった。
帝国データバンクの担当者は「訪日外国人観光客がしばらく見込めず、あきらめムードの中で会社をたたむようになった」と分析。今後も増加する可能性があるとし、地方でホテル・旅館業向けに食料品や物品を供給する事業者にも波及して地域経済の地盤沈下につながることを懸念する。
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「感染収束が前提になるが、需要を掘り起こさないと観光産業はもたない。先手先手で政策を打ち出すことで事業者の不安を軽減させていく必要がある」と強調し、衆院選に向けて政治の場で議論が活発になることを期待する。(高久清史)