最後に宝刀の「ケツ股」 柔道女子芳田、意地の銅

女子57キロ級3位決定戦。ジョージア選手を破った芳田司=日本武道館
女子57キロ級3位決定戦。ジョージア選手を破った芳田司=日本武道館

26日に行われた柔道女子57キロ級で初出場の芳田司(コマツ)は3位決定戦でリパルテリアニ(ジョージア)に一本勝ちして銅メダルを獲得した。

茫然(ぼうぜん)と座り込んだ準決勝の敗戦から約1時間。芳田は「絶対に銅メダルを取ってやる」と切り替えた。女子57キロ級3位決定戦。小柄な体で潜り込んではね上げる武器の内股を2度炸裂(さくれつ)させた。合わせ技一本。悔しさをはね返し、意地の銅メダルを首にかけた。

5年前に見た夢舞台は「別世界」だった。女子63キロ級の田代未来(コマツ)の練習相手として同行したリオデジャネイロ五輪。これまでの国際大会とは桁違いに緊張感が漂う雰囲気に「ずっとブルブルと震えていた」。一方で会場の盛り上がりを肌で感じ、「自分も出たい」と自国開催の五輪に思いをはせた。

中学から京都の親元を離れ、神奈川で寮生活を送った。福岡の高校を経て、実業団のコマツへ。五輪2連覇の谷本歩実さんらを輩出した強豪の稽古では「ぼろ雑巾だった」と先輩たちに全く歯が立たなかった。筋力トレーニングに励み、打ち込みの一本ずつを大切に地力を培い、2018年に世界女王へと上り詰めた。

内股は、身長156センチの体格で劣るデメリットを解消すべく、低い姿勢から潜り込むようにお尻をぶつけてはね上げるため「ケツ股」と自称する。ただ、海外勢の対策は年々強まった。今大会も準決勝まで一つも決まらなかった。3位決定戦は「やっぱり内股で勝ちたかった」。最後まで頼った宝刀が自分を救ってくれた。(田中充)

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