連覇の柔道・大野 孤高貫いたオールドスタイル

【東京五輪2020 柔道男子73キロ級】準決勝で攻める大野将平=日本武道館(松永渉平撮影)
【東京五輪2020 柔道男子73キロ級】準決勝で攻める大野将平=日本武道館(松永渉平撮影)

26日に行われた柔道男子73キロ級は大野将平(旭化成)が制し、2連覇を達成した。

五輪金メダリストの古賀稔彦や吉田秀彦らを輩出した東京の柔道私塾「講道学舎」で鍛え、西の名門・天理大で腕を磨いた。真っ向から組み合う真剣勝負を好み、自らを「オールドスタイル」と形容する。

決勝は9分半近い激闘。指導も2つ受けた。それでも最後は投げた。柔道界の絶対王者、男子73キロ級の大野将平(旭化成)が五輪2連覇を成し遂げた。

男子60キロ級を制した高藤直寿、男子66キロ級の頂点に立った阿部一二三(ともにパーク24)の決勝後の礼儀正しい所作が、日本柔道の評価を高めている。

5年前のリオデジャネイロ五輪ですでに体現していたのが大野だ。「柔道の素晴らしさ、強さ、美しさ」を誇示した金メダリストは決勝の畳で派手なガッツポーズはなく、いつものように深々と礼をした。この日も相手と健闘をたたえ合い、一礼して畳を降りた。

リオ五輪以降は2017年春に体重無差別の全日本選手権を挟んだだけで、主戦場からは1年以上も遠ざかった。天理大大学院での学業を優先。東京・講道館に出向いて文献を読みあさり、大外刈りに関する修士論文を完成させた。

ロサンゼルス五輪金メダリストで論文を指導した天理大教授の細川伸二氏はいう。「柔道の技は『崩し・作り・掛け』と教えられる。だけど、大野が自分の動きを分析したらそうじゃなかった。トップ選手は、作りと崩しが一体となり、直後に掛けていた」。論文の肝になる発見だった。

1964年東京五輪で初めて実施競技になってから57年。世界中に広まり、各地の格闘技と融合した柔道を、日本男子の井上康生監督は「JUDO」と使い分ける。映像などの情報分析によって「丸裸」にされ、最先端のトレーニングで肉体を進化させる海外勢が打倒・大野に燃える。それでも孤高の29歳は「正しく組んで、正しく投げる」と日本の伝統的なスタイルでねじ伏せてきた。

「前回の東京五輪、そして国際化された現在の両方から感じ取れる柔道を日本武道館で体現したい。柔道発祥国の柔道家として、誇りを持って戦いたい」。日本柔道の伝統の重みを受け止めた先に、偉業が待っていた。(田中充)

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