ギリシャのパルテノン神殿を思わせる威容から「地下神殿」の異名をとる防災施設「首都圏外郭放水路」(埼玉県春日部市)に、非公開だった排水ポンプの羽根車を見学できるコース「インペラ探検コース」が登場した。「神殿」の奥へと進み、暗闇の中を水に浸かりながら歩いて羽根車を探す―。26日の見学会に参加し、さながら冒険の世界に飛び込んだかのような新コースを体感した。
コースに足を踏み入れると、まず、河川から取り込まれた水が集まる深さ70メートルの巨大な縦穴「第1立坑」に圧倒される。最上部から見下ろすとのみ込まれそうな感覚に陥る。
続いて姿を現すのは、「神殿」と称される「調圧水槽」だ。取り込んだ水の勢いを弱めるための設備で、高さ18メートル、奥行き177メートルもの巨大空間に大きな柱が林立するさまは荘厳の一言に尽きる。
そしていよいよ、新コースの最大の見どころである羽根車「インペラ」だ。水を地下から地上に押し上げるための直径4メートルの羽根車は、調圧水槽を歩き切った先、ひざ辺りまで水に浸かりながら暗闇の中を歩いていくと頭上に現れる。冒険で宝物を見つけたような気分になる。
見学会ではヘルメットにヘッドライト、長靴を装備する。スタッフによる説明などを含めて110分で、見学料は4千円。17日のスタート時から好評で、約1カ月先まで予約で埋まっているという。
26日の見学会に参加した埼玉県杉戸町の公務員、秋山賢さん(48)は「探検のようだった。あの大きなインペラが回るとは」と興奮しきり。東京都練馬区の小学6年生、及川拓也さん(11)は「インペラまでの水の高さがけっこうあって、水圧を感じた。治水の仕組みも学ぶことができてよかった」と話した。
首都圏外郭放水路は、洪水であふれそうになった中小河川の水を、地表から約50メートルの深さにある総延長6・3キロのトンネルを通して江戸川に流す施設だ。見学会は国土交通省や春日部市などで作る「首都圏外郭放水路利活用協議会」が主催し、東武トップツアーズ(東京)が運営している。
新コースは「調圧水槽の奥も見たい」という見学者の要望を受けて開設された。市の担当者は、新型コロナウイルス感染収束後の観光誘客に向け「市の新たな魅力としたい」と話している。(中村智隆)