酒の蔵探訪

養老酒造(山梨県山梨市) 社長兼杜氏 こだわりと誇り

昔ながらの槽を使っての搾りを説明する養老酒造の社長兼杜氏の窪田裕光さん=山梨県山梨市(平尾孝撮影)
昔ながらの槽を使っての搾りを説明する養老酒造の社長兼杜氏の窪田裕光さん=山梨県山梨市(平尾孝撮影)

山梨県にある日本酒の蔵元では、「ウチが一番小さいんですよ」と語るのは、山梨市唯一の蔵元、養老酒造の社長であり、杜氏(とうじ)の窪田裕光さん(47)だ。従業員はおらず、窪田さん1人で酒造りをしている。江戸時代末期創業の老舗で、窪田さんが6代目だ。

かつては、一般的な酒蔵同様に、杜氏や蔵人を雇って酒造りしていたが、窪田さんは、「ウチの規模では、杜氏を雇う余裕はない」として、父親である5代目の時に、自身が杜氏となった。その後経営も引き継いだ。大変だが、「その分、自分の思いや昔ながらの酒造りにこだわってやっていける」と、社長兼杜氏の利点を説明する。

築200年を超す古民家のなかにある酒蔵で、かすかな甘みがある笛吹川の伏流水を仕込みに使い、水温5度の冬の冷たい水で、窪田さんが洗米する。さらに、多くの酒蔵では珍しくなった酒造りの道具が現役だ。甑(こしき)と和釜を使って米を蒸し、発酵したもろみを酒袋につめ、槽(ふね)の中に並べて積み、丸2日かけて丁寧に搾っている。

窪田さんは「酒は人と人とをつなぐ。うちは小さいながらも誇りをもってこだわって酒を造っていく」と語る。

そのため、最近の日本酒のトレンドでもある「フルーティですっきりした酒」とは、一線を画した造りだ。事実、養老酒造を代表する原酒「櫂(かい)」は、まろやかな口当たりだが、アルコール度数20度で、強いのど越しという特徴的な味わいとなっている。