主張

京アニ事件2年 迅速手続きで真相究明を

36人が死亡し、32人が重軽傷を負った京都アニメーション(京アニ)放火殺人事件の発生から2年が経過した。

だが、殺人罪などで起訴された青葉真司被告の公判前整理手続きは、いまだ始まっていない。最先端の治療で九死に一生を得た被告に事件の真相を語らせるためにも、迅速な手続きを求めたい。

被告は「ガソリンを使えば多くの人を殺害できると思った」と容疑を認めている。ただ、「京アニに小説を盗まれた」という身勝手な言い分が、なぜ平成以降で最悪の放火殺人事件に飛躍したのかは理解しがたい。この点を公判で被告に語らせる必要がある。

被告には精神疾患での通院歴があり、最大の争点は刑事責任能力の有無と程度だ。京都地検は約半年間の鑑定留置を行った上で被告に責任能力があると判断し、起訴に踏み切ったが、被告の弁護側が今後、新たな鑑定を請求する可能性もある。裁判所が認めれば、再び数カ月に及ぶ鑑定が行われることになる。

だが、審理をいたずらに遅らせることは、被告をはじめ、被害者や関係者の記憶を薄れさせることにもつながる。京都地裁は起訴の翌日、公判前整理手続きを行う決定をしているが、7カ月が過ぎた今も期日は入っていない。

公判前整理手続きに要する平均期間は7カ月あまりだ。被害者が多い重大事件では2年を超えるケースもあるとされる。

相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が殺傷された事件も、争点は被告の刑事責任能力だった。起訴の約7カ月後には公判前整理手続きが始まったが、初公判が開かれたのはその2年3カ月後で、公判は約2カ月間に及んだ。

大勢の社員がいる社屋内にガソリンをまき放火するという凶悪な行為に及んだ青葉被告は、自らも皮下組織に達する「3度」の熱傷を全身の93%に負った。最先端治療を施して一命をとりとめさせたのは、事件の真相を語らせ、罪を償わせるためでもある。

入院先での逮捕という異例の手続きをとった京都府警は、何よりも被告の記憶の減退などによる「供述の汚染」を恐れたという。慎重な審理を期すあまり、「汚染」が進むことがあっては本末転倒である。救われた命の意味を忘れてはならない。

会員限定記事会員サービス詳細