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「断崖絶壁」かき氷 東京・目白「志むら」

たっぷりとした果肉感も魅力の「生いちごかき氷」=東京都豊島区の「志むら」(酒巻俊介撮影)
たっぷりとした果肉感も魅力の「生いちごかき氷」=東京都豊島区の「志むら」(酒巻俊介撮影)

一口食べれば、火照った体に氷の冷たさが染み渡る-。和の甘味、かき氷は夏の風物詩だが、最近は、一年を通して足を運ぶファンも増えているという。氷とシロップというシンプルさ。しかし細部にこだわりが行き渡る。かき氷人気の秘密を探るべく、都内の有名店を訪ねた。

繊細な口どけ…

JR山手線の目白駅(東京都豊島区)から3分ほど。目白通り沿いに和菓子屋「志むら」はある。昭和14年創業で、2、3階の喫茶室には、かき氷目当ての客が絶えない。

1番人気は「生いちご」(1100円)。静岡県牧之原市の農家から仕入れたイチゴ「紅ほっぺ」を使用。果肉感を残した手作りのシロップを、これでもかというほど氷にかけた、ぜいたくな一品だ。

ほかにも、「宇治金時」や自家製あんこをたっぷりと使った「白玉」など定番7種が通年で食べられる。期間限定のメニューも豊富で、夏の「ずんだ」や「つぶつぶ夏みかん」は例年好評だ。毎週メニューの入れ替えを行い、「いつ来ても新しい味が楽しめる」と、常連の30代女性は喜ぶ。

「志むら」のかき氷は、盛り方に特徴がある。あんこや果肉でシロップに重みがあるため、かけたときに氷がつぶれてしまわないよう、氷に高さを出し、〝断崖絶壁〟のようにして盛る。その見た目から、「志むらの崖氷」と呼ばれる。

ふわふわした氷は口に入れると、すっと溶ける。温度や湿度、季節によって、氷の厚みを変えている。165円を追加で払えば、八ケ岳で時間をかけて凍らせた「天然氷」で味わうこともできる。

志むらがかき氷の提供を始めたのは昭和30年くらいから。夏限定だったが、6、7年前から通年にした。喫茶室マネジャー、江良保正さん(40)は「おいしいかき氷を一年中食べてほしかった」と話す。初めの年の冬は1日に3杯ほどしか出なかったが、今では冬でも100杯を下回ることはない。

 氷の厚みは気温や季節で調整する。ふんわり、高々と盛られて、氷の崖ができる(酒巻俊介撮影)
氷の厚みは気温や季節で調整する。ふんわり、高々と盛られて、氷の崖ができる(酒巻俊介撮影)

年中食べられる

日本かき氷協会代表の小池隆介さん(49)によると、「かき氷人気はここ10年ほどで加速した」という。提供店は増え、本屋にはかき氷専門のガイド本も多く並ぶ。その理由は「志むら」のように、季節を問わずに食べる人が増えたから。同協会では秋冬にもかき氷を食べてもらおうと、試食イベントを開催したり、ガイド本を出版したりして、普及活動を進めてきた。

また、かき氷のバリエーションも豊かになった。最近は、生クリームがのるケーキのようなものや、日本酒がかかったものなども登場している。

さらに、写真共有アプリ「インスタグラム」の定着が大きい。ダイナミックで色鮮やかな見た目は写真映えする。さまざまな店で、かき氷の写真が撮影され、拡散していった。

ガイド本を眺めると、あれもおいしそう、この店も行ってみたいと思えるかき氷だらけ。その思いは猛暑でますます高まっている。(浅上あゆみ)